2004.11.18

Philip Morris社、実際は内部組織だった研究所で副流煙の危険性を確認していた

 スイスと英国の研究者らが、米国の大手タバコ会社Philip Morris社(PM社)が30年以上に渡って隠してきた取り組みについて調べ上げ、Lancet誌電子版に11月11日に報告した。タバコ業界は長らく、喫煙の害を示す生物学的証拠を認めようとはせず、業界内ではそうした研究を行っていないとしてきた。が、これは真実ではなかった。

 1998年のミネソタ州との法的和解に基づき、大手タバコ6社は、同州とコネチカット州の倉庫に保管されていた内部記録の公開を求められた。ここで初めて、PM社とINBIFOという研究所の関係が公になった。

 文書によると、同社が生物学研究を行う場所が必要と認識したのは1968年だ。同社副社長のWakeham氏は、反タバコ勢力に立ち向かうために、生体系を用いた実験データが必要と考えた。翌年、同氏は研究施設の設立準備をBostonで始めた。が、会長兼CEOのCullman氏はさほど熱心でなく、欧州での委託研究のほうがリスクが少ないと主張し、両氏は合意した。1970年末、有限会社化された研究所INBIFOがドイツで売りに出された時、計画は実行に移された。Wakeham氏は、喫煙が病気の原因であることを否定する証拠が欲しかったが、実際にはそれは難しいと考え、代わりに3つのテーマを設定した。喫煙に関連する病気の原因を他に求める研究の実施、業界の代理として証言する熟練した科学者の養成、業界の役に立つ、喫煙の生物学的・心理社会的・疫学的影響を示すデータを得る研究の実施だ。

 INBIFOは米国PM社の完全所有となったが、獲得もスイス子会社を通じて行われるなど、隠蔽は徹底された。研究内容がPM社と関連づけられないよう、1972年以降は、込み入った連絡システムが用いられた。その中心となるコーディネーターには、スウェーデン人のRylander氏が選ばれた。同氏は、任務にあった期間のほとんどをスウェーデンGothenburg大学の教授として過ごしている。氏の仲介でPM社とINBIFOの関係はほぼ完全に隠匿された。PM社の元社員で、同僚がRylander氏と接触していたというUydess氏の1996年の告白によると、PM社でINBIFOについて知っていたのは極く少数の幹部のみだった。同社のプログラムの結果や知見は、文書でなく口頭で伝えられた。

 実際にはINBIFOはPM社の内部組織で、PM社が必要とする情報を得るための研究、主に喫煙と健康に関する研究が行われていた。2つの組織の間では、直接の接触が禁じられていた。米国からの連絡は、スイス子会社を経由して、またはドイツの偽の住所当てに行われた。研究所からの報告はRylander氏を通じて行われた。

 ここまでしてPM社との関係を隠そうとしたINBIFOはどんな研究をしていたのか。一部の研究は論文発表されており、PubMedで検索できる。そのいくつかは業界に有利な報告となっている。疫学論文の一つは、肺ガンと緑茶を関係づけていた。他に、タバコへの暴露の程度の測定に指標として使用されているコチニンや特定のDNAマーカーに疑いを投げかける論文もあった。

 こうした報告された研究結果とは別に、大量の未公開データもあった。INBIFOは1980年代に、副流煙に関する動物実験を数多く行った。800を超える研究レポートは、副流煙の方が主流煙よりも毒性が強いことを、非常に明快かつ一貫して示した。

 しかし、PM社は、2002年4月の時点でも、米国のある裁判所で、受動喫煙が病気を引き起こすという陳述をはねつけている。

 以上のような経緯は、自らの利益を守るために研究を利用する業界の姿勢をあからさまにした。では、タバコ業界は、今後、何を目標にすればよいのか。INBIFOの最新の研究を見ても明らかなように、安全なタバコの開発になるだろう。資金が業界以外から得られる見込みはなく、業界の努力が求められるはずだ。

 この論文の原題は「The whole truth and nothing but the truth? The research that Philip Morris did not want you to see」、概要はこちらで閲覧できる(Lancet誌のサイトへの登録が必要です)。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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