2004.11.15

心不全ではUCPが上昇、GLUT4は低下してエネルギー産生を減少させる可能性を示唆

 英国とスウェーデンの研究者らは、心不全で冠動脈パイパス術を受けた患者39人を対象に、血漿中の遊離脂肪酸レベルと心筋ミトコンドリアの脱共役蛋白質(UCP)、心筋と骨格筋のグルコース・トランスポーター(GLUT4)のレベルを調べた。すると、遊離脂肪酸とUCPのレベルは上昇、GLUT4は減少していることが判明した。詳細はLancet誌11月13日号に報告された。

 心不全患者では、心筋フクレアチン燐酸(PCr)/ATP比が低い。これは心臓のエネルギー不足を示唆する。また、この比は血漿遊離脂肪酸濃度と逆相関する。遊離脂肪酸は、転写因子でもあるペルオキシソ−ム増殖活性化受容体(PPAR)と相互作用する。一方ATPは、ミトコンドリア内膜の内外のプロトン勾配をエネルギー源として生産される。勾配が減れば合成は減少する。UCPは、ATP合成無しにプロトン勾配を減らし、熱を発生させる。心臓には、UCPのアイソフォームのうちUCP2とUCP3が存在する。ラット心筋細胞では、遊離脂肪酸存在下で、UCP2とUCP3のmRNAレベルが上昇、GLUT4が減少することが示されていた。

 研究者らは、39人の患者から血液と心筋標本を得た。血液は前夜からの絶食後に採取された。その結果、遊離脂肪酸と、心筋のUCP2およびUCP3蛋白質の量に正の相関が、遊離脂肪酸と、心筋と骨格筋のGLUT4濃度に負の相関が見られた。この傾向は、糖尿病の有無や、ベータ遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、スタチンの使用と無関係だった。

 従って、心不全におけるエネルギーの欠乏は、ミトコンドリアUCPの上昇(ATP合成の効率が低下)と、GLUT4の消耗(グルコース取り込みの減少)の結果と考えられた。そこで研究者たちは、心臓で遊離脂肪酸によるPPARの転写因子活性が上がると、ミトコンドリアでUCPの発現が上昇、これによりATP合成無しにプロトン勾配が減り、ミトコンドリアのエネルギー源が減少する、という一連の反応を想定した。この説は、心筋のPCr/ATP比が血漿の遊離脂肪酸と負の相関を示す理由を説明できるだろう。また、遊離脂肪酸値を下げ、同時に代替エネルギー源を供給する新治療が有望を示唆した。

 原題は「Uncoupling proteins in human heart」、概要はこちらで閲覧できる(Lancet誌のサイトへの登録が必要です)。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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