2004.11.13

慢性心不全患者における血清エンドセリン濃度の上昇は、生命予後の独立した予知因子にならない

 慢性心不全患者では病像の悪化とともに血清エンドセリン(ET)濃度が上昇するが、それは生命予後の独立した予知因子になるほどではなく、そうした因子としては、血清BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)濃度上昇がはるかに優っている−−。イタリアMario Negri薬理学研究所のSerge Masson氏(写真)は11月10日、慢性心不全患者を対象としたかつてない大規模臨床試験であるVal-HeFT(Valsartan in Heart Failure Trial)における検討成績として、このように報告した。

 慢性心不全では神経ホルモン因子が過剰に活性化しており、それが病態を悪化させるとともに、生命予後不良を招く要因になっていると考えられる。血管内皮細胞で産生される血管収縮性ペプチドETも神経ホルモン因子の1つであり、これまでにも心不全患者では血清ET濃度が上昇しているとの報告は多い。しかし、そうした報告はいずれも十分な数の心不全患者で検討されたものではないため、血清ET濃度の予後予知因子としての意義については未だ明らかになっていない。Masson氏は、この点について明確にする目的で、慢性心不全患者を対象とする臨床試験としては最大規模のVal-HeFTの一環として、今回の検討を行った。

 Val-HeFTに登録された慢性心不全患者は約5000例で、これは大きく米国での登録例(1934例)と、米国以外の国での登録例(2359例)に分けられる。登録時における神経ホルモン因子の検査ではBNP、ノルエピネフリン、アルドステロン、レニン活性などとともに米国ではET-1が、米国以外の国ではET-1の前駆体であるBig ET-1が測定された。

 ベースライン時における血清ET-1濃度の中央値は1.50pM(IQR : 0.70-2.80)、血清Big ET-1濃度の中央値は0.80(IQR : 0.64-1.04)であった。血清ET濃度と背景因子との関係では、血清ET濃度が高い例ではNYHAIII、IVの重症例が多く、血清BNP濃度も高いなどのことが認められた。血清ET濃度と生命予後との関係では、ET濃度の上昇につれて死亡率が上昇していた。しかし、その他の神経ホルモン因子や疫学的因子などで補正した多変量回帰分析の結果では、血清ET濃度の上昇は生命予後の独立した予知因子とはなっていなかった。

 Masson氏は、「慢性心不全患者では重症度が増すとともに確かに血清ET濃度も上昇する。しかし、それには生命予後を予知するほどのパワーはないと思われる」と結論付けた。なお、多変量回帰分析の結果、最も強力な生命予後の予知因子として認められたのは、やはり血清BNP濃度の上昇であったという。

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