2004.11.11

スタチン投与は慢性心不全患者の生命予後も改善

 高脂血症治療薬スタチンは確立した慢性心不全患者においても安全に生存率を上昇させており、長期予後の改善に有用−このような可能性が、心不全患者5010例を対象とした大規模臨床試験Val-HeFTのデータベースを用いたオーストラリア・モナシュ大学Henry Krum氏らのretrospectiveな解析結果として11月10日、報告された。スタチンが心血管イベント発症ハイリスク患者の生命予後を改善することは、これまでも種々報告されてきた。しかし、スタチンが慢性心不全患者でも有用かどうかについては信頼できる報告がなく、今回のKurm氏らの報告が初めて。

 Val-HeFTは標準的治療を受けている中等症〜重症の心不全患者5010例に、プラセボまたはアンジオテンシンII受容体ブロッカーのバルサルタン投与を行い、総死亡および心血管イベントを比較した大規模臨床試験である。その結果、バルサルタン併用は入院リスクを27.5%低下させるなど、心血管イベントを有意に減少させることが判明している。今回、Krum氏らは、VaL-HeFTの対象5010例をベースライン時におけるスタチン使用の有無により使用群1062例と非使用群3408例に分け、それぞれの背景因子、生存率と心血管イベントを含んだ予後、臨床検査所見などについて比較検討した。

 背景因子の比較では、スタチン使用群は非使用群に比べて平均年齢が低い、女性の比率が低い、NYHAIII〜IVの重症例の比率が低い、虚血性病因をもつ者の比率が高い、糖尿病の比率が高い、BMIが高い、収縮期血圧が低い、β遮断薬使用の比率が高いなどの特徴が見られたが、LVEF、LVIDdなどの心機能、ACE阻害薬使用などに関して差は見られなかった。血中ビリルビン、コレステロール、アルドステロン、BNP、CRP濃度は使用群では有意に低く、逆にクレアチニン、GOT、GPTは使用群で高かった。

 追跡期間2年を経た時点での生存率と心血管イベント発生率の比較では、スタチン使用群は非使用群に比べてmortalityを19%、mortality+morbidity(M&M)を15%低下させていた。多変量回帰分析の結果では、スタチン使用群の非使用群に対するmortalityの相対危険率は0.81(0.70〜0.94)、M&Mの相対危険率は0.87(0.78〜0.98)と算定された。

 なお、スタチン使用群でのmortalityとM&Mの低下は、ベースライン時でのコレステロール値が低く、虚血性病因をもつ患者でより著明に認められた。なお、スタチン使用によるmortalityおよびM&Mの低下は、バルサルタン投与の有無で異なっておらず、スタチンとバルサルタンとの間での相互作用は認められなかった。試験終了時検査所見では、スタチン使用群でCRPとノルエピネフレン濃度が低下していることが目を引いた。

 Val-HeFTという最新の大規模臨床試験の解析結果として以上のような成績が得られたことから、スタチン薬は慢性心不全患者の生命予後改善にも有用である可能性が大いに高まったといえる。しかし、最後にKrum氏は、「これはあくまでもretrospectiveな検討であり、スタチンが本当に慢性心不全に有用というためにはprospectiveな検討での証明が必要であろう」と締めくくった。
(尾辻誠、医学ライター)

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