2004.11.11

拡張期血圧上昇と心房細動は心筋梗塞後における脳卒中発症の重要リスクではあるが、治療で修飾可能

 急性心筋梗塞後のハイリスク患者に好発する脳卒中の予知因子としては年齢、90mmHg以上の拡張期血圧(DBP)上昇、心房細動(Af)の3つが最も重要である−−。このような事実がVALIANT(The Valsartan in Acute Myocardial Infarction Trial)の一環として行われた解析の結果から明らかになった。報告した米国Brigham and Women's病院のUshechukwu K Samson氏(写真)は、「年齢を除いたDBP上昇とAfの2つは治療的介入による修飾が可能なだけに、ハイリスク患者では特別の注意を払っておくのも必要なことであろう」と語った。

 左室収縮機能不全と心不全のどちらか一方または両方を伴うハイリスクの急性心筋梗塞後患者では、脳卒中の発症リスクが増大することが指摘されている。しかし、このことをエビデンスとして差し出すことができるほどの大規模臨床試験成績は乏しい。そこでSamson氏らはVALIANTにおける検討の一環として、この点について解析を加えた。
V
 ALIANTは急性心筋梗塞後のハイリスク患者1万4703例を、アンジオテンシンII受容体ブロッカーのバルサルタン単独、ACE阻害薬のカプトリル単独、両者の併用という3つの治療法で長期間治療(中央値は24.7カ月)し、有効性と安全性を比較検討したもの。Samson氏らは、試験期間中の脳卒中発症率を調べるとともに、発症リスクに関して、92に及ぶ種々の患者背景因子で補正する多変量回帰分析を行った。

 VALIANT期間中における脳卒中発症は463例(3.2%)に見られ、うち124例は致死的、339例は非致死的であった。また、463例中の140例は急性心筋梗塞後60日以内に、316例は1年以内に発症していた。脳卒中のタイプ別では、40例が出血性、348例が虚血性、残りの75例は不明であった。

 発症リスクについての多変量回帰分析の結果では、年齢、人種(黒人)、DBP上昇、心筋梗塞部位(前壁)、糖尿病、心拍数、脳卒中またはTIAの既往、狭心症、心不全、Af、クレアチニン・クリアランスなどがリスクとして浮上してきたが、中でも年齢、DBP上昇、Afの3つが最も強力な脳卒中発症の予知因子であることが明らかになった。腎機能低下は急性心筋梗塞後数週以内といった早期の脳卒中発症で大きなインパクトをもっていたが、左室駆出率やKillip classは脳卒中発症の予知因子にはなっていなかった。なお、急性心筋梗塞後の脳卒中の発症率に、治療薬別による差は認められなかった。

 ハイリスク急性心筋梗塞後患者における脳卒中発症頻度は高く、50例に1例は心筋梗塞発症後の1年以内に脳卒中を発症していることになる。Sampson氏は冒頭のごとく、「その最も強力な予知因子のうちのDBP上昇、Afは治療により修飾可能なものだけに特別の注意が必要である」と述べて、報告を終わった。
(尾辻誠、医学ライター)

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