2004.11.10

心血管疾患発症の性差にAT2受容体が関係

 虚血性心疾患などの心血管疾患の発症には性差があり、一般成人では女性の方が男性に比べて発症リスクが小さいことが認められている。これには性ホルモンに加えてアンジオテンシンII2型(AT2)受容体が関係していることが、AT2受容体ノックアウト(KO)マウスを用いた愛媛大学医学部分子細胞生命科学講座医科学・心血管生物学分野の奥村みどり氏(写真)らの検討から明らかになった。11月8日に発表した。

 心血管疾患発症の基盤になる血管リモデリングは、アンジオテンシンII1型(AT1)受容体刺激による細胞増殖、炎症、酸化ストレスなどにより亢進する。これに対しAT2刺激は拮抗的作用を示すことで、血管リモデリング過程を調節していると想定される。近年、AT2受容体遺伝子がX染色体上に存在することが明らかになったことから、AT2受容体の発現には性差があり、これが性ホルモンのエストロゲンと並んで血管リモデリングにおける性差の要因となっているのではないかという仮説が生まれている。今回の奥村氏らの検討は、この仮説を検証したものである。

 対象は野生型ならびにAT2KOマウスで、大腿動脈にポリエチレンカフを装着することで内膜肥厚を誘発した。そして、その部位におけるAT2受容体発現、血管平滑筋細胞(VSMC)増殖、炎症、酸化ストレスなどを評価し、野生型とAT2KOマウスの間で、また、雄性と雌性マウスとの間で比較、検討した。その結果、野生型では傷害部位におけるAT2受容体発現が増強しており、それは雄性よりも雌性マウスでより著明であった。一方、野生型では傷害部位におけるVSMCのDNA合成、新内膜形成は雄性より雌性マウスで抑制されており、同様に炎症の指標であるTNF-αやMCP-1(monocyte chemoattractant protein-1)発現、酸化ストレスの指標であるスーパーオキシド産生やNADPH酸化酵素(P22phox)発現も雄性より雌性マウスで抑制されていた。これら各種パラメータの変化は、野生型に比べてAT2KOマウスでは著明に増強していたが、興味深いことに、雄性と雌性マウス間における性差は小さくなっていた。

 次いで奥村氏らは、血管リモデリングの性差におけるAT2の病理学的役割をさらに明らかにするため、上記の実験系にAT1受容体ブロッカーバルサルタンを加えた検討を行った。すると、野生型では傷害部位におけるVSMCのDNA合成、新内膜形成はバルサルタンにより抑制され、その抑制効果は雄性よりも雌性マウスで著明であった。しかし、AT2KOマウスではバルサルタンの効果は減弱し、効果の雄性と雌性マウス間における性差も小さくなっていた。

 奥村氏は、「血管傷害時におけるAT2受容体発現は雄性に比べて雌性マウスで著明であり、これが血管リモデリングに対して防御的に作用し、雌性マウスにおける血管リモデリングの起こりにくさの1つの要因になっている可能性がある」と総括した。

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