2004.11.09

社会的支援得られない慢性心不全患者は再発率が3倍:九州大の前向き調査で判明

 慢性心不全では再発による入院が約40%と非常に高く、急性期を脱した通院患者に対する効果的な疾患マネジメントが模索されている。日本人の慢性心不全患者を対象とした精神・心理的側面についての前向き研究で、「不安」と「社会的支援の低さ」が再発入院の大きな要因になっていることを示唆する注目すべき結果が得られた。九州大学大学院医学系研究科循環器内科学の眞茅みゆき氏が11月8日のポスターセッションで発表した。

 眞茅氏らの研究グループは、心不全で福岡の4カ所の医療施設に入院し、症状が安定して外来通院している18歳以上の患者139人を対象として、2003年4月から7月にかけて、うつ病、不安、社会的支援などについての面接調査を実施し、面接後1年間の再入院をエンドポイントとして追跡調査を実施した。

 追跡期間中に36人が心不全で再入院した。再入院群と非再入院群で面接結果をもとに精神心理的状況と社会的支援について比較したところ、米国などで関連性が指摘されているうつ病については統計的有意な差は見られなかったが、不安の訴えについては、非再入院群で3割前後だったのに対して、再入院群では6割弱、社会的支援の低さでも、非再入院群の4割弱に対して再入院群では7割弱と、顕著で統計的に有意な差が見られた。

 面接結果と疾患・病歴データについて多変量解析を実施したところ、不安と低い社会的支援は、いずれも再入院の独立の予測因子になった。ハザード比で見ると再入院群では不安が3.5倍、低い社会的支援については3倍と高く、慢性心不全患者の予後を改善するうえで、心理的ケアや社会的支援が重要な役割を果たす可能性を示唆する結果になった。

 年齢・性による違いをみると、不安については高齢(75歳以上)、女性ではハザード比が高く、低年齢(75歳未満)、男性では有意差が見られなかった。社会的支援については逆に男性で関連性が高く、女性では有意な関連性は見られなかった。女性では社会的支援は効果が薄いことを示す結果だが、むしろ、「女性は人間関係の形成能力が高く、社会的支援を必要としない傾向が強いという指摘がある」(眞茅氏)と見るのが適切のようだ。

 本研究の成果から、抗不安薬投与やメディカルソーシャルワーカー(MSW)の介入などによる慢性心不全の予後改善の可能性が期待されるわけだが、眞茅氏は、「保険診療の中で適切な介入を行うため、まず独居高齢者などのハイリスク群に絞って介入試験を試みたい」と語った。(中沢真也)

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