2004.11.09

アンジオテンシII2型(AT2)受容体の刺激は、酸化ストレスや血管平滑筋細胞の炎症の軽減を介して動脈硬化病変の形成を抑制

 AT2受容体の刺激は動脈硬化病変の形成の抑制につながり、その機序の少なくとも一部には、酸化ストレスや血管平滑筋細胞における炎症の軽減が関わっている可能性がある−−。このような事実が愛媛大学医学部医生化学血管生物学・分子細胞生物学部門の岩井將氏(写真)らによるAT2受容体/ApoE(アポリポ蛋白E)ダブルノックアウト(DKO)マウスを用いた実験結果から明らかになった。11月7日に発表した。

 アンジオテンシンII1型(AT1)受容体の刺激が動脈硬化病変の形成を促進することはよく知られている。AT2受容体刺激はおそらくこれと拮抗的に作用することが想定されているが、その詳細は未だ明らかではない。この点を明らかにする目的で、岩井氏らは今回の実験を行った。

 岩井氏らはC57BL/J株マウスを元にしてAT2/ApoE DKOマウスを作成、これを高コレステロール食(1.25%コレステロール)で10週間飼育した後の動脈硬化病変を、ApoE KOマウスとで比較検討した。また、AT1受容体ブロッカーであるバルサルタンをosmotic minipumpを用いて注入し、その影響についても検討した。動脈硬化病変は近位大動脈交差部をoil-red Oで染色して評価。スーパーオキシド産生はdihydroethidiumを用いて測定するとともに、NADPH酸化酵素のサブユニット(p47phoxなど)をWestern blotおよび免疫組織学的手法で検出した。さらに、岩井氏らはSparague-Dawleyラット胎仔の胸部動脈から血管平滑筋細胞を分離培養し、NADPH酸化酵素活性をlucigeninを用いて測定するとともに、NADPH酸化酵素サブユニットのリン酸化と転移についてもWestern blotで評価した。

 結果は、AT2/ApoE DKOマウスではApoE KOマウスに比べて動脈硬化病変の形成が亢進し、スーパーオキシド産生ならびにNADPH酸化酵素サブユニットの発現も増強していた。バルサルタンによる動脈硬化病変の形成抑制効果および酸化ストレスの抑制効果は、ApoE KOマウスに比べてAT2/ApoE DKOマウスでは減弱していた。培養したラット胎仔胸部動脈の血管平滑筋細胞におけるNADPH酸化酵素活性ならびにNADPH酸化酵素サブユニットの血漿膜への転移はアンジオテンシンIIにより亢進していたが、これはバルサルタンで抑制された。しかし、AT2受容体拮抗作用のある薬物(PD123319)によっては逆に増強していた。

 以上から岩井氏は、「AT2にはAT1と拮抗的作用のあることが今回の実験からも裏付けられた」とし、冒頭のごとく「AT2刺激による動脈硬化病変の形成抑制には酸化ストレスや血管平滑筋細胞の炎症の軽減が関与していることも確かめられた」と総括した。また、「バルサルタンの抗動脈硬化作用には、AT1抑制に加えてAT2刺激が一部関与していることも示唆された」と述べた。

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