2004.11.08

冠動脈性心疾患で左室機能がほぼ正常の人には、ACE阻害薬は不要の可能性

 冠動脈性心疾患で左室機能がほぼ正常の人で、既に標準的治療を受けている場合には、加えてACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬を服用しても、心血管疾患による死亡や心筋梗塞、冠動脈再生術のリスクは変わらないとする研究結果が出た。これまで、ACE阻害薬が心不全患者の死亡や心筋梗塞リスクを減らす点などについては明らかになっていたものの、全ての冠動脈性心疾患の患者に投与すべきかどうかを示すエビデンスはなかった。これは、米国立衛生研究所(NIH)内のNational Heart, Lung, and Blood Institute(NHLBI)の研究グループが行った大規模試験「Prevention of Events with Angiotensin Converting Enzyme Inhibition」(PEACE)の結果で、11月7日のレイトブレイキング・セッションで、米Brigham and Women’s HospitalのMarc Pfeffer氏(写真)が発表した。米国心臓病学会(AHA)などの現状のガイドランとは相反するエビデンスとなった。

 PEACEでは、心筋梗塞暦があったり、これまでに冠動脈バイパス術(CABG)や経皮経管冠動脈形成術(PTCA)などを行った冠動脈性心疾患の患者で、左室駆出率が40%を超える8290人について、多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行った。被験者は2群に分かれ、一方にはトランドラプリル4mg/日を、もう一方にはプラセボを投与した。被験者の平均年齢は64歳、血圧は平均133/78mmHg、左室駆出率は平均58%、追跡期間の中央値は4.8年だった。

 その結果、心血管疾患による死亡や心筋梗塞、冠動脈再生術を行った人の割合は、合わせて、トランドラプリル群が21.9%、プラセボ群が22.5%と、両群に差はなかった。

 PEACEの研究を行ったNHLBIのMichael Domanski氏は、「冠動脈性心疾患で心臓機能がほぼ正常な人は、ACE阻害薬を血圧を下げるなど別の目的で使わない限りは、ACE阻害薬を服用することによる効用はあまりないようだ」と指摘した。一方で同じくNHLBI のYves Rosenberg氏は、「ACE阻害薬は心不全や心室機能不全の人に対しては、依然として勧められている」点を強調している。

 なお、AHAや米国内科学会(American College of Physicians;ACP)などの現状のガイドラインでは、心不全のない冠動脈性心疾患の人に対してもACE阻害薬の投与を勧告している。PEACEが発表されたセッションの司会者で、今年10月に公表したACPガイドラインの筆者の一人でもある、Raymond Gibbons氏は、「ACPのガイドラインについて、PEACE結果を元に再検討する必要がある」とコメントした。PEACEの結果はまた、NEJM誌11月11日号で公表される。
(アンドリュー・テンヘイブ、當麻あづさ、医療ジャーナリスト)

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