2004.11.08

小児1型糖尿病の発症率上昇の原因はどこにあるのか

 過去50年間に、小児の1型糖尿病発症率は毎年3〜5%ずつ上昇した。特に5歳未満での発症が増えている。英国の研究者らは、50年以上前に15歳未満で1型糖尿病の診断を受け、現在も生存している患者194人と、1985〜2002年に診断を下された582人の患者の間で、疾病感受性を付与するHLAクラスIIハプロタイプの頻度を比較した。その結果、発症率上昇への環境要因の関与が示唆された。詳細は、Lancet誌11月6日号に報告した。

 HLAのハプロタイプには、1型糖尿病発症リスクを上昇させるものと減少させるものがある。発症年齢が低いほど、ハイリスク型を持つ患者の割合は高い。しかし、急速な発症率上昇は、遺伝のみでは説明できない。

 研究グループは、血液と口腔粘膜を標本として、HLAクラスIIのDRB1、DQA1、DQB1を分析した。発症から50年以上を経ている集団では、47%がハイリスク型(DR3-DQ2/DR4-DQ8)を持っていた。1985年以降の集団ではその割合は35%だった。

 5歳未満の患者のみを比較すると、ハイリスク型の存在率は前者が63%、後者が42%だった。後者の集団では、DR3-DQ2/XかDR4-DQ8/Xの遺伝子型を持つ人の割合が多かった。これらの型は、発症リスクを与えるがハイリスクではない。

 リスクに関わる遺伝子型を持たない人の割合は、両群ともほぼ同じだった。遺伝的易罹患度・閾値モデルは、同様の素因を持つ集団が、発症を招く環境に晒されると、HLAに関係する遺伝的罹病性は進行性に希釈されることを示す。今回の結果は、この仮説を支持した。

 同誌に寄せられたコメントは、糖尿病患者が50年以上生存する確率は40%以下で、これによるバイアスが予想されること、これほど迅速な発症率上昇を説明できる遺伝モデルはないこと、DR3とDR4を持たない小児糖尿病患者は増えていないことなどから、環境の関与は考えられるが、要因があまりに偏在するために特定できない可能性が高いと述べている。

 その上で、先頃開始された、小児糖尿病発症に関わる環境要因を明らかにする国際プロジェクト(TEDDY)に対する期待を示した。これは、1型糖尿病リスクに関わるHLA-DR、DQ型を持つ数千人の新生児を15年間追跡するプロジェクトだ。

 論文の原題は「The rising incidence of childhood type 1 diabetes and
reduced contribution of high-risk HLA haplotypes」、概要はこちら
で閲覧できる(Lancet誌のサイトへの登録が必要です)。 (大西淳子、医学ジャーナリスト)

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