2004.11.01

コホート研究はイラク戦争開始からの民間人の死者が予想を大きく超える可能性示す

 米国Johns Hopkins大学とイラクAl-Mustansiriya大学等フ研究者が、2004年9月、イラク各地で聞き取り調査を行った。その結果、2003年3月に米英を中心とする軍隊がイラクに侵攻して以来、戦争が原因で死亡した民間人の数は10万人を優に越える可能性が示された。詳細はLancet誌電子版に10月29日に報告された。

 英米のNGO集団「イラク・ボディー・カウント」は戦闘で死んだイラク市民は約15000人と推算していた。

 今回の調査では、開戦前の14.6カ月と、それ以降の17.8カ月の死亡率とおよび死因が比較された。イラク各地からそれぞれ30世帯からなる集団33個、計7868人を選び、面接により2002年1月以来の世帯の構成、出生と死亡に関する情報を得た。死亡については、日付、原因、「暴力」による死の場合にはその状況を記録した。

 侵攻前の死の主な原因は、心筋梗塞、心臓血管系疾患、その他の慢性疾患だった。ところが侵攻後は、暴力が死因の1位となり、相対リスクは開戦前の58倍だった。暴力による死の2/3は、ファルージャで起きていた。ファルージャの人口はイラク全体の3%に過ぎない。ファルージアで調査対象となった集団では、開戦前の比率で推算すると開戦後の死亡者は1.4人のはずが、実際には53人が死んでいた。このデータを基に計算すると、この地域だけでなんと20万人が開戦後に死亡したことになる。調査時点でファルージャは最も治安の悪い場所であり、半数弱の世帯が途中で連絡が取れなくなど、特殊な状況にあった。従って、データの不確実性は高い。

 イラク全土での死の相対リスクは、侵攻前の2.5倍となったがファルージャのデータを除けば、1.5倍だった。侵攻およびそれに続く占領が原因で死亡したとみられる民間人は、ファルージャを除いた推算で9万8000人以上となった。したがって真の死者数は、さらに多いはずだ。

 著者たちは「控えめに見ても民間人が10万人以上死んでいる。空爆がその多くの原因で、被害者は主に女性と子供だった」などと述べている。

 論文の原題は「Mortality before and after the 2003 invasion of Iraq:cluster sample survey」、現在全文がこちらで閲覧できる(Lancet誌のサイトへの登録が必要です)。(大西淳子・医学ジャーナリスト)

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