2004.10.26

選択的COX-2阻害剤の販売停止をめぐって浮上したFDAの疑惑、GAOが捜査

 米国Merck社は9月30日、骨関節症治療に用いられていた選択的COX-2阻害剤「Vioxx」(rofecoxib)の販売を停止した。長期服用で心筋梗塞や脳卒中のリスクが4倍に上昇することが臨床試験で示されたからだ。British Medical Journal(BMJ)誌10月23日号のJeanne Lenzer氏の報告によると、米国食品医薬品局(FDA)は、この副作用情報をかなり以前につかんでいたにもかかわらず、対応しなかったようだ。

 FDA薬剤安全局の副局長David Graham氏は、「Vioxx」の副作用に気づいてFDAの上層部に報告したとき、無言の脅しを感じたという。David Graham氏の主張を受け、米国会計検査院(GAO)が捜査を開始した。GAOは既に、FDAのAndrew Mosholdrer氏が小児に対する抗うつ剤投与の危険性を指摘した際に、FDAが公表を禁止した件について捜査を進めている。GAOの広報担当者は「Graham氏の告発も加わり、GAOは、薬剤の安全性の問題をFDAがどう取り扱っているのかを詳細に調べる」と述べた。

 Iowa州選出の上院議員Chuck Grassley氏は10月15日、「製薬会社を監督する立場にあるFDAが、Merck社と不適当な契約を結んでいたのか。FDAと製薬会社とのなれ合いが、リスクが明白な薬剤をより長く市場に留めておいたのか」と追究する手紙をFDAに送付した。Chuck Grassley氏は不適切な関係の証拠として8月12日付け電子メールのコピーを提出した。FDA薬剤安全局の局長代理Trontell氏からMerck社に送信されたこのメールは、Graham氏を批判するとともに、報告が公になる前にFDAはMerck社に連絡し、メディアからの過度な注目への準備を可能にする、と告げていた。

 心臓血管系疾患の専門家は、FDAのデータおよび安全性監視委員会がMerck社に深刻な問題があると警告したのは1999年11月18日で、大規模な臨床試験の実施を要求できたFDAがそれを怠った結果、心臓発作または脳卒中を起こしたと推算される患者は2万〜16万人に上ると述べた。

 原題は「US government agency to investigate FDA over rofecoxib」 、全文がこちら(PDFファイル)で閲覧できる。

 BMJのLenzer氏によると、Merck社の撤退で利益を得るはずだったPfizer社も、現在批判の矢面に立っている。同社の選択的COX-2阻害剤「Bextra」(valdecoxib)に関する副作用情報の公表が遅れたからだ。

 FDAデータ安全性・リスク管理諮問委員会のCurt Furberg氏は、Pfizer社からのデータ提出は、遅かっただけでなく、最終データから問題となる重要な部分が除去されていたと批判した。Pfizer社は当初、この製品は骨関節症と関節リウマチ患者に対して安全と主張していた。しかし10月15日にリリースを発表、冠動脈バイパス術患者にこれを投与した2件の臨床試験で、統計学的有意性は証明されないものの心臓血管系合併症のリスク上昇という深刻な副作用が「Bextra」投与群に見られたことを明らかにした。462人を対象とする1件目の試験のデータは、2003年6月に論文発表されていた。Pfizer社は、米国ではいかなる手術の際にもこの製品の投与は認められていないし、他の一般的な手術や通常の使用では、血栓症のリスク上昇は見られていないと述べている。

 FDAのFurberg氏は、「Vioxx」の副作用が明らかになって以来、Pfizer社に
「Bextra」の心臓血管系への影響を示すデータの提供を求めてきた。しかし、同社は、2件の試験は規模が小さすぎるなどと説明していた。

 上記2剤は日本ではまだ認可されていないが、他の選択的COX-2阻害剤は既に市場にある。欧州では、COX-2阻害剤全てについて副作用の見直しが始まるという。

 原題は「Pfizer criticised over delay in admitting drug's problems 」、全文がこちら(PDFファイル)で閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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