2004.10.22

ヤクルト、高血圧対策のトクホ「プレティオ」を11月に発売 ギャバを含有し、大ヒットを狙う

 ヤクルト本社が、高めの血圧を下げる効果のある乳酸菌飲料「プレティオ」を11月1日から発売する。販売目標は今年度(2005年3月末まで)1日50万本、来年度以降、早期に1日100万本を目指すという力の入った商品。1日100万本は、希望小売価格換算で年400億円強の売り上げに相当する。

 100ml入りで、これを毎日1本飲み続けると高めの血圧が下がることが、3回にわたるヒト試験で確認され、厚生労働省からトクホ(特定保健用食品)表示の許可を受けている。

 上の血圧(収縮期血圧)が130〜160mmHg、下の血圧(拡張期血圧)が85〜100mmHgという血圧が高めの人(軽症高血圧や正常高値の人)が、1日1本を4週間以上続けたら、上の血圧は10mmHg、下の血圧は5mmHgほど低下した。

 価格は1本120円。「血圧が高めの方に適した」トクホはすでに10を超える商品が販売されているが、血圧対策のトクホ飲料は1日当たり160〜600円程度。「プレティオ」は価格的には最も安い部類のトクホといえる。

 ヤクルトの「ミルミル」や「ビフィール」と同じ形状の紙パック入りで、のむヨーグルトのような味わい。「プレティオ」は宅配専用商品で、コンビニやスーパーでは販売されず、ヤクルト・レディを通じて消費者に届ける。

空咳の心配がない

 「プレティオ」にはもう一つ、特徴がある。

 血圧を下げる一部の医薬品の副作用として知られる「空咳(からせき)が出る」という心配が、「プレティオ」にはないこと。

 この副作用が出るのは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬という医薬品の場合。ACEは、アンジオテンシ1を切断して、血圧を上昇させるアンジオテンシン2を生み出す酵素。この酵素の働きを邪魔(阻害)すると、アンジオテンシン2のできる量が少なくなり、血圧を下げるというメカニズムで効果を発揮する。

 ところがACE阻害剤は同時に、咳が出る刺激物質と考えられているブラジキニンを分解する酵素も阻害してしまう。つまりACE阻害剤を服用すると、ブラジキニンの量が増え、空咳という副作用が出ることがある。

 実は、販売されている高血圧対策トクホ飲料の多くは、「体質や体調によりまれに咳が出ることがある」という注意書きを表示している。

 多くの高血圧対策トクホ飲料は、ACE阻害剤と同じ働きをする成分が配合されているため、この注意書きをすることを厚生労働省が指示したためだ。トクホ飲料をのんで実際にせきが出るのはごくまれといわれるが、この注意書きは消費者にとって気になる。

 「プレティオ」にはこの注意書きがない。血圧を下げるメカニズムがACE阻害とは異なるからだ。

 高血圧対策トクホの多くは、カツオやイワシ、乳たんぱく質などから作り出したACE阻害ペプチドを配合している。

 これに対して「プレティオ」は、副交感神経を高めるギャバ(γアミノ酪酸、GABA)を含有する。ギャバが、神経末端からのノルアドレナリンの分泌を抑制して、腸管細動脈の収縮を抑えることにより血圧を下げることを、星薬科大学の鎌田勝雄教授らとの共同研究でヤクルト本社中央研究所が確認している。

 「プレティオ」はギャバを1本100mlに10mg含む。ギャバは、アミノ酸の一種であるグルタミン酸から、一つの反応で簡単に作ることができる。ヤクルト本社中央研究所は、乳たんぱく質の一種であるカゼインがグルタミン酸を多く含むことに着目し、まずカゼインからグルタミン酸を切り出し、次いでグルタミン酸をギャバに変換するという製造法を確立した。

 自社保有の乳酸菌株の中から、前者のグルタミン酸を切り出す能力が高い菌として、ヤクルト菌(ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株)を選び出した。「ヤクルト」や「ジョア」「ソフール」などに使用している乳酸菌だ。

 後者のギャバを作る能力が高い乳酸菌としては、ラクトコッカス・ラクチスを選び出した。こちらは「ミルミルE」や「ビフィール」などに使用している乳酸菌だ。

 乳たんぱく質のカゼインを乳酸菌で発酵させるという製法は、2003年度に63億円を出荷し、高血圧対策トクホの市場で75%を占めたカルピス「アミール」と類似している。

 「アミール」はラクトバチルス・ヘルベティカスという乳酸菌の働きで、ACE阻害の働きをもつラクトトリペプチド(LTP)ができ、このLTPが血圧を下げる働きを担っている。ラクトトリペプチドは、特定のアミノ酸が3個特定の順番で結合したVPPとIPPを、主なACE阻害の成分として含んでいる。

 これに対し、「プレティオ」ではACEを阻害する成分が含まれていないと、ヤクルト本社中央研究所は論文に記載している。「プレティオ」が血圧を下げるのは、ギャバの働きで、ACE阻害ペプチドの働きではないという。

 「プレティオ」は、発酵に利用したこれら乳酸菌も多く含んでいる。厚生労働省の乳等省令で決められている成分規格の種類別名称では「乳製品乳酸菌飲料」に分類される。「乳製品乳酸菌飲料」は乳酸菌の数が1ml当たり1000万以上。一般にヨーグルトと呼ばれる「はっ酵乳」と同じで、乳酸菌数が最も多い規格の一つだ。

 「乳製品乳酸菌飲料」が「はっ酵乳」と違うのは、無脂乳固形分が3.0%以上と、「はっ酵乳」の8.0%以上に比べて少ない点だ。

 ただし、「プレティオ」は血圧を下げる有効成分が乳たんぱく質から発酵で作られるため、無脂乳固形分は5.5%と、乳製品乳酸菌飲料としては濃度が高い。

 「プレティオ」の新製品発表が都内で開催された10月18日の翌日、「プレティオ」を試飲用に用意しているヤクルト・レディに都内オフィス・ビルで出会った。

 新製品発表日(10月18日)の午後から、全国4万8000人のヤクルト・レディが顧客向けにモニターを募集し、試飲用サンプルの提供を開始したためだ。味わいを試してみてはどうだろう。(河田孝雄、医療局編集委員)

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