2004.10.19

インフリキシマブは投与開始後の早期から運動機能を改善する−−欧米12カ国共同のSTART試験より

 運動機能の改善は、関節リウマチ患者のQOLを左右する重要な治療課題のひとつである。しかし、インフリキシマブを用いた場合のその効果発現までに要する期間は、かつて詳細に検討されたことがなかった。そこで、米国Arizona大学のDavid Yocum氏らは、欧米12カ国が共同で行ったSTART試験の結果から、インフリキシマブ投与開始後の早期から運動機能に著明な改善が認められたことを本演題にて報告した。

 START試験は無作為化・プラセボ対照・二重盲検比較試験である。メトトレキサート(MTX25mg/週以下)を3カ月間以上継続しても十分な効果が得られなかった活動性の関節リウマチ患者1082例が対象とされ、MTXに加えてインフリキシマブ(3mg/kgまたは10mg/kg)ないしはプラセボが併用された。インフリキシマブは0/2/6/14週に投与され、22週までの評価が行われた(START試験は約1年間の試験期間を有するが、本検討では22週までのデータが解析に供された)。なお、プラセボ群(以下、MTX単独群)には361例、インフリキシマブ3mg/kg群と同10mg/kg群(併用)には各々360例と361例が無作為化され、試験開始前と2/14/22週目に運動機能が評価された。運動機能の評価にはHAQ(Health Assessment Questionnaire)が用いられ、着衣、起床、摂食、歩行、衛生、伸展、手作業、活動性など日常生活動作の各項目が点数化された。試験開始前の平均HAQは3群でほぼ等しく1.40点から1.48点に分布しており、HAQ中央値は3群とも1.5点であった。

 試験の結果、早くも2週間後にはインフリキシマブ3mg/kg群および同10mg/kg群にて著明なHAQ点数の低下(すなわち改善)が認められた。2週時の平均HAQ低下値は、MTX単独群の−0.08(各項目−0.01〜−0.13)に対し、インフリキシマブ3mg/kg群では−0.23(各項目−0.14〜−0.31)、同10mg/kg群では−0.24(各項目−0.17〜−0.31)と算定され、両インフリキシマブ群ともMTX単独群に比して有意な改善を認めた(p<0.001)。なお、インフリキシマブ両群間の改善度には、顕著な差異が認められなかった。

 インフリキシマブ両群では2週から14週にかけて、さらにHAQの改善が進んだ。14週時の平均HAQ低下値は、インフリキシマブ3mg/kg群で−0.38、同10mg/kg群で−0.40と算定された(各p<0.001 vs MTX単独群)。この改善は、インフリキシマブ両群間に顕著な差異を認めず、また、14週をピークとして22週目も維持される傾向にあった。一方、MTX単独群では経時的な改善の向上が認められず、平均HAQ低下値は14週で−0.10、22週で−0.11と算定された。

 22週時に評価されたHAQ著明改善(−0.25点以上の低下)とHAQ正常化(0.5点未満に到達)の患者割合は、MTX単独群が38.2%および14.8%、インフリキシマブ3mg/kg群が57.9%および23.8%、インフリキシマブ10mg/kg群が63.7%および25.7%であり、インフリキシマブ両群ともに多くの患者が極めて良好な奏効を示した(全てp<0.001 vs MTX単独群)。
 
 インフリキシマブの骨破壊進行抑制効果を実証した大規模臨床試験として、ATTRACTが広く知られている。同試験では、30週目までの報告(Maini R et al. Lancet 1999)と54週目までの報告(Lipsky PE et al. N Engl J Med 2000)があり、前者はACR20/50/70によって症状の改善が評価され、後者ではX線的骨破壊の進行抑制が評価されている。こうした効果に加えて、投与後早期から運動機能(日常生活動作)の改善が得られるインフリキシマブは、関節リウマチ患者のQOL向上と予後改善に寄与しうるものと考えられる。「START試験は、大変に重要な示唆を臨床に与えている。すなわち、運動機能が早期に改善されることに加えて、その効果が低用量でも十分に得られたことが意義深い。10mg/kg群では若干多かったが、3mg/kg群の副作用頻度はMTX単独群と同等であった。ATTRACT試験とSTART試験を比較するか、ないしは相補的に考えることで、インフリキシマブの有用性が理解できる」とDavid Yocum氏自らが語った。(水田吉彦、医学ジャーナリスト)

*本演題は海外で実施された臨床試験であり、インフリキシマブの国内未承認用量が含まれます。

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