2004.10.12

乳児への虐待は泣きやまぬことによって誘発される

 子供に対する虐待とネグレクトは、小児の罹患率と死亡率を高める。オランダの研究者らは、生後1〜6カ月の乳児3259人を対象に調査を行い、乳児の長泣きが両親の有害な行動を引き起こす可能性を指摘した。詳細はLancet誌10月9日号に報告された。

 ユニセフの推計によると、OECD加盟国で1年間に3500人の子供が虐待により死亡している。うち800人以上が生後0〜11カ月の乳児だ。さらに、虐待総数は死亡者数の150〜2000倍になるという。

 虐待のリスク因子として、社会経済的な地位の低さ、暴力を容認する文化的背景、家族の崩壊、社会的隔離、子供の病気、親の精神的病気や薬物濫用、親自身が被虐待者だった、などが想定されている。

 しかし、何が虐待の引き金を引くかについては明らかではない。これまでに複数の症例報告が、子供の長泣きが致命的な虐待の引き金になりうることを示した。乳児は生後3〜4カ月までの間に最も良く泣く。ゆさぶられっこ症候群の発生時の月齢の平均は2.2カ月だ。今回オランダの研究者らは、子供の長泣きに誘発される親の有害な行動の頻度を調べ、予防的措置の対象となるリスク群の特定に取り組んだ。乳児が長泣きしたときにとった行動の自己報告を匿名で親たちから集めたところ、一部の親は、子供を泣きやませるために虐待と見なされるような行動をとることが明らかになった。

 虐待のハイリスク群は、移民、失業者、血のつながっていない親だった。実際に子供が泣き続けている時間は、親が感じているほど長くない場合が多い。従って、リスク因子を持つ親で、わが子は過度に泣くと考えている人々に接する医療関係者は、虐待の可能性に注意し、泣いている子供への対処法を指導する必要があるだろう。

 論文のタイトルは「Infant crying and abuse」、概要はこちらで閲覧できる(Lancetのサイトへの登録が必要です)。 (大西淳子、医学ジャーナリスト)

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