2004.10.09

【日本高血圧学会速報】 家庭血圧測定の普及で1年間で3376億円もの医療費を回避できる可能性

 家庭血圧測定が普及することで1年で996億円の医療費、327億円の介護費が削減できる−−。伸び続ける医療費をどのようにまかなっていくべきかは、とかく現状の医療費の削減だけが議論の的になりがちだが、家庭血圧を導入することで、その後の医療費ならびに介護費までも削減できる可能性が示された。10月7日のポスターセッションで、東北大学の舟橋仁氏らの研究グループが発表した。

 研究グループは、随時血圧に基づいた高血圧診断基準が家庭血圧に基づいたものに移行した場合に、主治医の診療行動がどのように変化するのか、また患者の受診行動に変化が現れるのかを推定し、その結果として医療費がどのように変化するのかを調べた。

 使用したデータは、家庭血圧を導入した高血圧・循環器疾患に関するコホート試験である大迫研究から、30歳以上の一般住民のうち家庭血圧および随時血圧を同時期に測定した2821人(1986〜1996年)のデータ。さらに厚生労働省の統計データを対象とした。

 推定に当たっては以下のような仮定を設けている。
1.高血圧性疾患に関わる医療費 13.5万円/年・人
2.高血圧性疾患に関わる薬剤費 5.7万円/年・人
3.急性期脳卒中に関わる医療費 357万円/年・人
4.慢性期脳卒中に関わる医療費 96万円/年・人
5.虚血性心疾患に関わる医療費 71万円/年・人
6.介護保険費用額 153万円/年・人

 また、診療面での条件も以下のように規定している。
1.降圧治療中患者は100%家庭血圧を測定し、必ず治療を継続
2.家庭血圧に基づき処方変更が必要と診断された場合、50%の割合で実際に処方を変更
3.降圧治療中患者が家庭血圧高血圧と診断された場合、増薬が行われ50%薬剤費が増加
4.降圧治療中患者が家庭血圧正常血圧と診断された場合、随時血圧に基づく治療では増薬が行われ50%薬剤費が増加されるはずであったが、家庭血圧にもとづく治療によりその薬剤費が回避
5.降圧治療中患者が家庭血圧過降圧と診断された場合、減薬が行われ50%薬剤費が減少
6.未治療かつ随時血圧高血圧と診断された場合、30%の割合で新規に受診
7.無治療かつ随時血圧正常血圧と診断された場合、10%が自主的に家庭血圧を測定
8.未治療者が受診した場合、家庭血圧を測定し、高血圧と診断された場合は必ず治療を開始
9.高血圧における脳梗塞発症率は、1000人当たり9.3人と仮定
10.高血圧における脳出血発症率は、1000人当たり5.0人と仮定
11.高血圧における虚血性心疾患発症率は、1000人当たり6.9人と仮定
12.家庭血圧による診断により新規治療開始または治療増強した人のうち、50%の割合で血圧が目標降圧度を達成
13.収縮期血圧10mmHg降圧した場合、脳梗塞の発症リスクが35%減少
14.収縮期血圧10mmHg降圧した場合、脳出血の発症リスクが50%減少
15.収縮期血圧10mmHg降圧した場合、虚血性心疾患の発症リスクが15%減少

 推定の結果、家庭血圧の導入による高血圧関連の医療費の変化をみると、導入時に2841億円の医療費増加が予想された。同時に、将来的な処方増量の回避、新規受診の回避を換算すると6217億円の医療費が削減できる結果となった。つまり1年間で3376億円もの医療費を回避できる可能性があるというものだ。

 また長期的な影響を検討すると、家庭血圧の導入により血圧が良好にコントロールでき、新規治療開始あるいは治療増強の患者でその50%が収縮期血圧10mmHg降圧できたと仮定すると、合併症予防による医療費削減効果が996億円(脳梗塞548億円/年、脳出血421億円/年、虚血性心疾患27億円/年)、合併症予防による介護費用の削減効果が327億円になった。

 これらの結果から研究者らは、「家庭血圧の導入は非常にコストエフェクティブであり、家庭血圧のさらなる普及が望まれる」と結論付けている。
(三和護)
 

 




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