2004.09.30

長野でクリプトスポリジウムの大規模な集団感染発生、プールでの2次感染も

 長野県の宿泊施設に8月下旬に滞在した千葉県と埼玉県のグループに、水道などを介して感染することが知られているクリプトスポリジウム症の大規模な集団感染が発生した。感染が強く疑われる発症者は約220人に達したほか、発症者が利用した千葉県内のプールで2次感染が発生する事態になった。

 クリプトスポリジウム症は、クリプトスポリジウム原虫の経口摂取によって起こる感染症で、発症すると水様性下痢、食欲低下、吐気、嘔吐、発熱などが起こる。免疫が正常であれば、数日間で回復するが、エイズ患者などの免疫不全者の場合、重症化して死に至ることもある。原虫は塩素消毒に対して極めて強く、水道水を介して感染することが知られている。日本でも1996年6月に埼玉県越生(おごせ)町(当時、現在は越生市)で町営水道が汚染され、全住民約1万3800人中約8800人が感染する大規模感染が発生している。

 本件では、スポーツ団体の合宿などによく利用される長野県の宿泊施設で千葉県と埼玉県から来訪したグループに下痢患者が集団発生し、9月1日に長野県から両県に健康調査の依頼が行われた。検査の結果、クリプトスポリジウム症の集団感染であることが判明した。発症者は千葉県のグループの239人中183人、埼玉県のグループの74人中34人を数え、近年にない大規模な集団感染となった。両県が9月初旬から中旬にかけて発症者の検査を実施したところ、千葉県では発症者183人中14人、埼玉県では発症者34人中26人からクリプトスポリジウムを検出した。

 発症者の中には発症後、自県のプールを利用した人がいた。発症者が利用したプール水の検査を実施したところ、埼玉県では陰性だったが、千葉県では、発症者が利用した県内のプール8施設を調査したところ、2施設のプール水からクリプトスポリジウムが検出された。このため、この2施設の利用者の健康調査を行ったところ、両施設の各1人からクリプトスポリジウムが検出された。この2人の新たな感染者は長野県での宿泊には参加しておらず、プール水を介しての2次感染の可能性が高い。発症者が利用した千葉県内の8施設については利用を停止し、プール水を交換した。

 集団感染の経緯については長野県などが調査を進めているが、解明されていない。しかし、当時、長野県の宿泊施設には9グループが宿泊していたが、患者が発生したのは千葉県の2グループと埼玉県の2グループの計4グループだけだったため、水道水や食事による感染の可能性は低いと考えられている。今のところ、排泄物、吐物などの不注意な処理を介し、糞口感染で広がった可能性などが指摘されている。

 千葉県の2グループは民間のスイミングクラブと大学の剣道部の合宿で、千葉県内で発生したプールにおける2次感染は会員制スイミングクラブの専用プールで発生した。このため、利用者の追跡は容易だったようだ。

 今回の集団感染で気になるのは、関連自治体が事態の沈静化まで集団感染について報道発表を控えた点だ。これについて埼玉県は、クリプトスポリジウムは内規上、報道発表する対象ではなかったこと、感染者が限定されていたため、家庭内の2次感染を引き起こさないよう個別に注意すればよかったこと、などを理由に挙げている。しかし、情報提供の時期や方法が適切だったかどうか、パブリックコメント募集などを通して議論を深めておく必要がありそうだ。

 千葉県のプレスリリースはこちら、埼玉県のプレスリリースはこちらまで。(中沢真也)

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