2004.09.16

【投稿】 介護保険を知るための講座(3) 「誰の負担で介護が始まるのか」  

 ちょっとした段差に転倒した結果骨折してギプスに固定され、そのうち歩行困難になる高齢者が多いようです。そのためには医療とリハビリの連携が求められています。日帰りの手術を誇っている病院では術後の指導に力を入れていると聞いていますが、急性期病棟から一般病棟に移るところが岐路のようです。「自宅に帰っても面倒を見てくれる家族がいない」などの理由で病院に滞在し続ける高齢者は現在でも多いようです。保険点数が稼げるからと劣悪な医療環境しか持たない悪徳老人病院もありました。

 介護の社会化が叫ばれる背景には医療費の高騰があります。介護特別養護老人ホームと名称が変更されたが、それまでは特別養護老人ホームへの入所は『措置』と呼ばれる行政対応でした。そもそも少子高齢化の問題と医療保険の破綻とは根を一つにしていると考えるべきでしょう。

 しかしながら税で負担してきた高齢者や障害者対策の行き詰まりを介護保険という制度で補償しようというかなり虫の良い話なのです。病院が社交の場と化しているから急性期と一般病棟を区分するといった本末転倒の論議もあるようです。

 面倒を見る家族がいない老人を看るのは断固病院ではありません。どういうわけか近年、生活保護を受ける高齢夫婦が増えていると言います。

 親の面倒を見たくても収入がないのか、それとも親の介護まで見ていられないという人が増えたのでしょうか。同居から別居へ、そして別々の人生へと若い人たちが選択していることにあります。生活保護認定についての市町村による調査はかなり厳格だと聞いています。それでも自分たちがリストラされかかっているのに親の面倒を見ることはできないというのでしょうか。

 特別養護老人ホームと老人病院との違いは行政が絡むか否かでしかなかったのではありません。しかし、福祉行政と医療行政という全く違った世界観の人たちの利権が絡んでいたのも事実のようです。『措置』から選択へ大きく舵を切った高齢社会対策ですが、最初の5年でボロを出し始めました。当局を中心に障害者を巻き添えにして被保険者を20歳以上にするというウルトラCの彌縫策を考え出しましたが、障害者団体の反対もありなかなか上手く進みません。

 サービスの中身は利用者本人が決めることですが、相変わらず役所の指導とやらが幅を利かせています。福祉用具利用の必要がない人に福祉用具貸与を勧めているという理由で要支援の人には福祉用具貸与を認めない方向での行政指導を始めようとしています。確かに介護保険のケアマネジャー(介護支援専門員)の力量より、介護保険関連企業の都合に合わせているように見えたこともあります。

 現状のケアマネジャーに対する点数では独立した事業主でやっていくことはできませんが、手を拱いてよいことにはなりません。

 現状の社会保障・社会福祉の実態を見ると「社会連帯」の意義につき国民的理解を得る絶好のチャンスだと思われます。負担の公平のことばかりでなく、バリアーフリー対応、介護技術、生き甲斐作り等(これらの総称を「国民介護力」と呼ぼうと考えます)が論議される必要があります。議論の結果を検討しているうちに逃げ水になってしまわないよう真剣にスピーディーに取り組みたいものです。「社会連帯」の意義は年金に対して国民が見せた関心を高めていくことから始まると思います。

介護保険を知るための講座(1)(2)は
「方円の器」ホームページで御覧下さい。



江上尚志 氏

         ■□□ 『長寿社会』の新しいネットワーク作りを考える
         ■□□ 「方円の器」
         ■□□ http://www11.ocn.ne.jp/~uten/index.html

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