2004.09.14

慢性閉塞性肺疾患に対する新規治療薬開発の現状と見通し

 近年、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症率は上昇しているが、基礎研究は喘息ほど進んでおらず、進行を遅らせる薬剤や炎症を抑える薬剤は市場にない。英国Imperial Collegeの研究者らは、1993〜2003年までの文献を調べ、COPD治療において有望な新規アプローチを総括、Lancet誌9月11日号に報告している。

 この病気は、気道と肺実質の炎症と線維化、そして破壊の進行を特徴とする。現時点で進行を抑制できる唯一の方法は禁煙だ。抗うつ剤(bupropion)の短期投与が、患者の禁煙支援に有用が示されたが、6カ月後まで禁煙を続けられた患者は16%に留まり、ニコチン依存症の成立機序に基づく有効なアプローチが求められている。

 現在、患者の管理に主に使われているのが気管支拡張剤だ。1日1回の吸入で有効なベータ2アゴニストが臨床試験段階にあリ、吸入型の長時間作用性抗コリン作用薬tiotropiumは既に一部の国で市販されている。

 GOPD患者の肺機能の維持に吸入ステロイド剤は有効でないことが3年間の臨床試験で示された。ステロイド感受性を高める戦略や、多剤との併用が試みられている。

 抗炎症剤は有望だが、全て開発途上にある。N-アセチルシステインや、より強力な抗酸化剤(赤ワインに含まれるresveratrol等)の開発が進む一方で、以下のような分子の作用を選択的に阻害する薬剤(主に低分子阻害剤)も開発されている。標的分子は、iNOS、ロイコトリエンB4や、COPDの炎症に特異的な接着分子、走化性に関連する因子(IL-8やCXCR2、CCR2、CXCR3)、TNFアルファ、PDE4、NFカッパB、p38MAPK、PI3K等だ。

 現在他の慢性炎症性疾患を対象に臨床試験段階にあるIL-10はCOPD治療薬としても有望だ。核ホルモン受容体PPARの活性化が抗炎症作用を誘導することも示された。これらの中でより有望と見られるのは、PDE4阻害剤、p38MAPK阻害剤、CXCR2アンタゴニストだ。

 肺粘液の産生を抑制する戦略の標的は、EGFとCACC、タキキニン等だ。線維化の阻害は、TGFベータ1経路やPAR2のブロックにより可能と考えられるが、これら分子の正常な機能が重要であるがゆえに長期的安全性が懸念される。

 気道の閉塞の防止には、プロテイナーゼ阻害剤とMMP阻害剤が有用視されている。肺胞修復にレチノイン酸受容体アゴニストを用いる試みもあるが、2型肺胞上皮細胞とClara細胞を幹細胞から分化させる細胞治療技術の開発に注目が集まっている。

 今後は、喫煙者の一部のみがCOPDを発症する理由を明らかにし、発症リスクに関わる遺伝子を同定する必要がある。病状や治療効果を反映するマーカーも捜さねばならない。いずれにせよ、基本的な発症機構の理解が進めば、新たな、有効な方策が見つかるはずだ。

 報告のタイトルは「Prospects for new drugs for chronic obstructive
pulmonary disease」、アブストラクトは、こちらで閲覧できる(Lancetのサイトへの登録が必要です)。 
(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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