2004.09.11

糖尿病性足潰瘍の新治療法 ウジを這わせて壊疽を清浄、足を切らずに治す

 糖尿病性足潰瘍に無菌ウジを這わせて、壊疽を清浄化する「無菌ウジ療法(Maggot Debridement Therapy;MDT)」が、今年3月国内で初めて岡山大学心臓血管外科の三井秀也氏によって行われた。これまでに5例が実施され、経過はいずれも良好だ。

 MDTは1930年代には100を超える論文に報告されていた伝統ある治療法。しかし、外科手術の発達や抗生物質の登場により次第に廃れていった。

 1990年になって抗生物質抵抗性の感染性潰瘍が見られるようになり、再び脚光を浴びることとなった。現在、オーストラリアやイギリスなどでは積極的に行われている。

 治療法はいたって簡単。無菌処理されたクロズキンバエの卵はオーストラリアから発送される。日本に着いた時点では2mmほどの幼虫になっており、これを1cm2当たり6〜10匹ほど潰瘍に置く。患部に置かれたウジは、壊死した潰瘍のみを食べながら、成長する。36時間後にはウジは1cmくらいまで成長している。ウジは蛹になる前に、1週間弱で取り除く。これを2週間で3回ほど繰り返すと、傷口が小さくなり、新しい肉芽組織が上がってくる(写真1〜5)。

 三井氏は、この治療法の利点として、副作用が見られず、禁忌症例もない、麻酔も必要としないことを挙げる。また、「ウジを這わせることでQOLを障害すると思われがちだが、足を切断しなくても済むことからむしろ向上する。患者からの評判もよい」と強調する。

 コストの面でもMDTが優れているという海外での報告もある。岡山大学病院では高度先進治療として校費から補助されているため、3回ほどの治療で100万円弱だったという。

 三井氏は「患者にも医師にもウジ虫=気持ち悪いというイメージがあるかもしれないが、MDTは画期的な治療法。今後は褥瘡や熱傷といった治療でも応用できるのではないか」と期待する。
(和田紀子、日経メディカル

*詳細は日経メディカル9月号をご覧下さい。また、写真2〜5の「◎」をクリックすれば、治療の様子を動画で見ることができます(随時公開。画像は岡山大学病院心臓血管外科の三井秀也氏の提供による)。

■写真1
治療開始前。
腰痛麻酔、全身麻酔下でデブリードマンを繰り返した。感染のコントロールはカデックス軟膏(ヨウ素かでキソマー)で行っていたが、肉芽の増勢はあまり見られなかった。


■写真2 動画◎
約2mmのウジを1cm2当たり6〜10匹、患部に置く。


■写真3 動画◎
36時間後。ウジは10mmくらいまで成長する。


■写真4 動画◎
治療開始から1週間後


■写真5 動画◎
治療開始から2週間後。新しい肉芽組織が上がってきた。

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 国が本腰「かぜに抗菌薬を使うな!」 リポート◎外来におけるかぜ患者への対応示す「手引き」登場 FBシェア数:1641
  2. 【詳報】成人肺炎診療ガイドライン2017発表 学会トピック◎第57回日本呼吸器学会学術講演会 FBシェア数:160
  3. PETやSPECTの結果から認知症診断は可能か? プライマリケア医のための認知症診療講座 FBシェア数:106
  4. 海外での日本人の死亡原因、最多76%が◯◯ 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:33
  5. 「ACOS」は本当に必要な疾患概念なのか? 倉原優の「こちら呼吸器病棟」 FBシェア数:61
  6. 無症候性甲状腺機能低下にレボチロキシンは不要 NEJM誌から FBシェア数:1
  7. 急性気管支炎、6割もの医師が「抗菌薬処方」 医師3642人に聞く、かぜ症候群への対応(その1) FBシェア数:183
  8. こう見えて医局制度肯定派の筆者が語る「居場所」論 研修医のための人生ライフ向上塾! FBシェア数:10
  9. 混ぜるな危険、ロラゼパムとロフラゼプ 原崎大作の「今日の薬局業務日誌」 FBシェア数:168
  10. 群大学長「今後も信頼の回復に努めていきたい」 学会トピック◎第117回日本外科学会定期学術集会 FBシェア数:48