2004.09.08

竜 崇正〔千葉県立佐原病院 院長〕

○医師は自分の限界を知り、専門医に積極的に任せる
○通信網整備で病院間ネットを形成し、総合診療を
○患者と向き合える医師の育成が大切

■問1
「均てん化」(全国どこでも質の高いがん治療を受けられる)という観点から、現在のがん診療体制に関する評価をお聞かせください。(一つ選択)
答 〔5:問題点や欠点、課題だらけである。〕

■問2
「がん均てん化検討会」で主要議題となる下記の6つの項目に関して、お考えやご意見があればお教えください。

2-1:がん医療における地域の実態と格差を生み出している要因
答〔がん医療は、ある意味一般医療にもなっていて、がんの患者を扱わない病院は経営的にも成り立たない状況である。逆にいえば、胃がんや大腸がんの手術等、標準的治療に関しては日本中どこでも差がないレベルに来ているように思う。治療がスムーズに行っている場合は、問題が明らかにはならないが、合併症が生じた場合に、種々の問題点が明らかになり、その医師の実力、病院の力量差が出る。それは、その医師の個人的経験に左右されすぎること、チームとして総合的に患者を診るシステムに欠けるからである。自分の不得意な分野で、専門家をチームに入れたり、専門病院に紹介したりするようなシステムがない。医師に広い心がない。〕

2-2:がん専門医等の育成
答〔がん専門医の育成がもっと望まれるが、臓器専門性ではなく、がん患者、すなわち傷付いた心を持つ、不安にかられている患者とどう向き会っていけるかというマインドを持った専門医が必要である。このような心のない専門ばかの専門医を育ててもしようがない。 〕

2-3:国、ブロック、都道府県(三次医療圏)、二次医療圏における各がん専門医療機関の役割分担を踏まえたネットワーク体制の整備
答〔光ファイバー網も用いた病院間医療連携と、情報の共有化が不可欠。そのためには千葉県病院群でやろうとしているような取り組みが重要。例えば肝臓がんの患者について、画像や検査のデータを病院を超えて専門医師に送り、読影し、プロトコールにそって治療方針を決定。患者は治療可能な病院に転院する。あるいは、その病院で治療可能チームを構成するため、他院の医師が参加する。〕

2-4:上記3を踏まえたがん専門医等の人材交流(派遣・受け入れの促進)
答〔人材交流は必要不可欠であるが、公立病院のアルバイト禁止、病院専任義務などがこれを阻んでいる。オーソライズされたシステムができなければ、人員交流は困難である。 〕

2-5:地域におけるがん専門医等の確保
答〔地域全体の医療をサポートする体制は皆無である。今までは大学が医師の供給源となって、これに病院長の個人的努力と人間関係で人材の確保がされていた。しかしこれが崩壊し、がん医療だけでなく、救急も含めた地域医療全体が崩壊の危機にある。この地域の医療体制の再構築は、「国民の生命と健康を守る役割があり、税金で運営されている」厚生労働省の責務である。〕

2-6:地域がん診療拠点病院制度のあり方
答〔光ファイバーネットワークによる病院群の構成により、拠点病院が可能となる。1つのがんセンターを作っても仕方がない。〕

■問3
上記以外で、日ごろより現在のがん診療体制の問題点であるとお考えになっている点、またその改善案などについてお教えください。

答〔1.医師がまず裁判や訴訟等を考慮して、責任逃れの後ろ向き面談をしている。どのようにしたら病気を治せるか、治癒させられるか(治らないまでもQOL=生活の質を維持するにはどうしたらいいか)という立場で、面談をすべきである。
2.そのための「徹底的情報開示」
3.医師だけでなく、看護師や、患者や家族も参加するチーム医療を。その病院だけの、その医師だけの特別な医療をやめさせる。
4.患者のクレームが検証でき、医療に活かせる体制。患者経験者がボランティアとして、病院にどんどん入ってくる体制の確立。また不当なクレームに対しては断固とした対応をする。
5.経営、商売の論理から医療を外す。これは国民の健康を守る基本投資であって、産業ではない。〕

■その他、がん診療に関して何かご意見などあれば

答〔 がん化学療法は、保険適用でしばられていて有効だと分かってもできない。治験の場合には入院費まですべて製薬企業が持つため、日本から世界に発信できる有用な治験ができない。患者は治療を受けるのだから、入院費や検査代は自分で払い、製薬企業が薬代を負担すれば、保険適用のない有効な治療も行なえ、その結果を科学的データとして世界に発信できる。〕

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