2004.09.03

ビカルタミド+LHRHa併用療法でLHRHa単独療法に対し、20%の生存期間延長実現

 転移性前立腺癌に対するビカルタミド(一般名、国内における販売名はカソデックス錠)と去勢術の併用療法に対して、カナダ・トロント市のSunnybrook & Women's College Health Sciences Centre教授のLaurence Klotz氏が今年6月に開催された米国癌学会(ASCO)で段階的手法を用いた分析結果を報告した。Klotz氏の来日を機会にその概要を聞いた。

 新薬の効果を測定する場合、倫理上、新薬対プラセボの直接比較は困難である場合が少なくない。この場合、新薬対既存薬、既存薬対プラセボの各成績から新薬対プラセボのハザード比を算出する手法がある。大腸癌の多剤併用療法について、米国食品医薬品局(FDA)がこの方法による臨床成績の提示を認めている。

 前立腺癌治療では、男性ホルモンの抑制が有効性の高い基本的な治療になっている。精巣と副腎から分泌される男性ホルモンを抑制するため、去勢術と抗アンドロゲン剤の併用療法が行われる。去勢術としては黄体形成ホルモン放出ホルモン促進薬(LHRHa)投与が多く用いられる。効果は物理的な精巣除去手術と変わらない。

 抗アンドロゲン剤のフルタミド、またはニルタミドとLHRHaを含む去勢術の併用療法の有用性が確立しているため、現在では、ビカルタミドと去勢術の併用療法を直接、去勢術の単独療法と比較する臨床試験を実施することは倫理的に許されない。

 そのため、ビカルタミド+去勢術とフルタミド+去勢術を比較する臨床試験の成績と、過去に実施されたフルタミド+去勢術と去勢術単独の成績を比較する臨床試験のメタアナリシスの結果から、去勢術単独治療に対するビカルタミド+去勢術併用療法のハザード比を算出することとした。ハザード比の算出は単純に両者の積を求めればよいが、信頼限界の算出は複雑な操作が必要になる。

 去勢術単独に対するビカルタミド+去勢術の併用療法ハザード比は0.8(95%CI=0.66-0.98)となり、有意に20%の生存率向上が得られた。5年間の成績で1年の生存期間延長に相当する。

 今後、日本だけでなく、中国などでも前立腺癌の発症者が増えてくるだろう。植物エストロゲンを豊富に含む大豆食品を多く摂取していたのに、豊かになったことで高脂肪のファーストフードなどを摂るようになってくるためだ。今のところ、前立腺癌による10万人あたりの年齢調整死亡率は、米国が100人程度なのに対して、中国は100分の1の1人程度と極めて低い。日本は両者の中間に位置するはずだ。ただし、医療施設が十分でない地域で、前立腺癌による死亡が確実に報告されていない可能性はある。

 従来は北米でさえ、前立腺癌に対する関心は低かった。わずか6年前の1998年頃までは研究環境は最悪で、死亡数、発症数は乳癌とほぼ同じであるにもかかわらず、研究費は乳癌の10分の1程度に過ぎなかった。しかし、Michel Milkenが創設したCapcureなど前立腺に特化した民間基金によって、状況は改善しつつある。

 これからの前立腺治療の課題としては、治療に対する反応を個々の患者でプロファイリングする治療がある。関連遺伝子を見つける努力が続いているが、乳癌の場合のようなクリアカットな遺伝子は見つかっていない。おそらく10〜20個のマイナーな遺伝子が関与している可能性が高い。(聞き手=中沢真也)

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