2004.09.01

下顎骨を患者本人の広背筋内で育てて移植、癌手術後のQOLが向上

 独豪の研究者たちは、8年前に癌摘出術を受け下顎骨を7cm以上失った56歳の患者の要望に答えて下顎再建に成功、その成果をLancet誌8月28日号に報告した。カスタムメイドの下顎骨は、患者の広背筋の中で育てられたものだった。

 骨移植に自家骨を用いる場合、採取部位に二次的な骨欠損が生じるという問題がある。また、今回の患者は、大動脈瘤のためにワルファリンを服用していた。従来型骨移植を行う場合、この薬は術後出血のリスクを高める。

 研究者たちは、3次元CTスキャンとコンピュータに基づく設計技術を用いて、欠損部分の代替となる構造を設計、テフロン製の鋳型を作り、それを基にチタン・メッシュ製ケージを作製した。鋳型を取り除いたあとに組換えヒト骨形成蛋白質-7でコートした骨塩ブロックを入れ、その間隙を患者自身の全骨髄で満たした。

 患者の右広背筋中にこれを移植、7週後に遊離骨筋皮弁として摘出した。移植片は、隣接した広背筋と胸背動脈および静脈と共に下顎部に移植され、血管吻合も成功した。移植後4週目に患者は、ガン手術以来初めて、流動食でなくパンとソーセージの夕食を楽しんだという。歯はないが、患者の咀嚼能は向上、本人は外見の改善にも満足した。

 今後も長期的な評価が必要だが、この技術は広範な適用が可能と期待される。また、QOL向上の意義は大きい。

 BBCニュースでも取り上げられたこの論文のタイトルは、「Growth and transplantation of a custom vascularised bone graft in a man」、アブストラクトは現在、こちらで閲覧できる(Lancetのホームページへの登録が必要です)。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 息子が中学受験、それでも地方に転職した医師の決断 医師ヘッドハンティングの舞台裏 FBシェア数:6
  2. 近所で有名な「怖い看護師さん」の処遇に悩む 榊原陽子のクリニック覆面調査ルポ FBシェア数:1
  3. 娘のかかりつけ医選びで知った最近の小児科事情 記者の眼 FBシェア数:93
  4. 医師国試の合格率は88.7%、大学別合格率は? 8533人の新医師が誕生、合格率は90%を切る FBシェア数:1788
  5. これで確定申告できるの? 頼りない税理士に怒り 開業の落とし穴 FBシェア数:2
  6. 梅毒かも、結果が出るまではエッチ厳禁で 井戸田一朗の「性的マイノリティの診療日誌」 FBシェア数:49
  7. 臨床研究法が臨床研究を撲滅する 池田正行の「氾濫する思考停止のワナ」 FBシェア数:9
  8. その免疫療法、本当に推奨できますか? トレンド◎あらゆる癌免疫療法に言及した日本初のガイドライン発行 FBシェア数:407
  9. 患者の同意なく雇用先に診療情報漏示は違法 判例に学ぶ 医療トラブル回避術 FBシェア数:1
  10. はしかを診たこと、ありますか? わかる!院内感染対策 FBシェア数:84