2004.08.31

冠動脈疾患に対する抗菌剤治療はやはり無効−−PROVE-IT、ACES試験より

 欧州心臓病学会2日目、8月30日の「HOTLINEセッションIII」で、冠動脈疾患に対するガチフロキサシン、アジスロマイシンの有用性をそれぞれ検討した大規模試験が報告された。冠動脈疾患例に対する抗菌剤使用としては最大規模の臨床試験だったが、結果は従来の小規模な検討と同様、「無効」というものだった。

 冠動脈疾患例ではクラミジアの検出頻度が高いため、「クラミジアによる炎症の抑制」という観点から抗菌剤の有用性が示唆されていたが、少なくとも冠動脈疾患をすでに有する例に対しては期待できないようだ。

 ガチフロキサシンの抗動脈硬化作用をを検討したのはPROVE-ITである。Brigham and Women's Hospital(米国)のChristopher Cannon氏が報告した。

 同試験は急性冠症候群(ACS)入院例に対する10日以内の積極的脂質低下療法の有用性を検討した報告が本年3月の米国心臓病学会(ACC)で報告されたが、「2×2デザイン」を用いて、入院15日後から開始したガチフロキサシンの有用性もプラセボ対照で検討していた。ガチフロキサシンは400mg/日を1日おきに投与した。

 対象となった4162例の平均年齢は58歳、およそ7割がACS治療として経皮的冠血行再建術(PCI)を施行されていた。

 平均2年間の追跡期間中、第一評価項目(死亡、心筋梗塞、不安定挟心症による入院、血行再建術)の発生率は、プラセボ群25.1%、ガチフロキサシン群23.7%で同等だった(p=0.41)。第一評価項目を構成する各イベント別、また年齢・性別や合併症別のサブグループで比較しても、両群間に有意差はなかった。

 また、血中の高感度C反応性蛋白(h-CRP)濃度も、両群で同等だった。

 一方、J. Thomas Grayston氏(米国)が報告したACESでは、アジスロマイシンの有用性がプラセボ対照で検討された。安定した冠動脈疾患を有する4012例が、「アジスロマイシン600mg/週」群(2004例)とプラセボ群(2008例)に無作為化され二重盲検法で追跡された。アジスロマイシン、プラセボの服用は当初1年間のみとした。

 対象の60%弱は心筋梗塞既往を有し、全体のおよそ90%が冠血行再建術を受けていた。また、アスピリンは90%弱、HMG-CoA還元阻害酵素はおよそ75%、β遮断薬は約60%が服用していた。

 平均3.9年間の追跡期間中、第一評価項目(冠動脈死、非致死性心筋梗塞、冠血行再建術施行、または不安定挟心症による入院)の発生率はプラセボ群22.4%、アジスロマイシン群22.3%で同等だった。第一評価項目の各イベント別に比較しても、アジスロマイシン群で有意に減少したものはなかった。

 さらに、試験開始時の血中クラミジア抗体価で3群に層別化して比較したが、抗体価の高低に関わらずアジスロマイシン群とプラセボ群の第一評価項目発生率は同等だった。同様の知見は、PROVE-ITにおいても得られている。

 Canon氏、Grayston氏ともに結論は、「冠動脈疾患治療に抗菌剤を用いるべきではない」というものだった。
(宇津貴史、医学レポーター)

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