2004.08.31

冠動脈イベント急性期の積極的脂質低下治療の有用性は未決−−A to Z(Z相)より

 欧州心臓病学会2日目となる8月30日、「HOTLINEセッションIII」において「A to Z(Z相)」が報告された。急性冠症候群(ACS)発症直後から開始するシンバスタチン高用量と慢性期に開始する通常量が予後に及ぼす影響を比較したが、「高用量直後開始」に明らかな有用性は認められなかった。Duke Clinical Research Institute(米国)のMichael Blazing氏が報告した。

 本試験の対象となったのは、ACS発症の疑いがあるためガイドラインに添った治療を受け、さらに血中総コレステロールが250mg/dL未満、かつ少なくとも1つの危険因子をもつ21歳から80歳の男女。直近6週間にHMG-CoA還元酵素阻害薬を含む脂質低下薬を服用していた例は、除かれている。

 4497例が登録され、2265例がシンバスタチン「早期高用量群」、2232例は「慢性期通常量群」に無作為化された。「早期高用量群」ではACS発症の平均3.7日後からシンバスタチン40mg/日を開始し、1カ月後には80mg/日へ増量を図った。一方、「慢性期通常量群はACS発症後4カ月間プラセボを服用し、その後シンバスタチン20mg/日に変更した。これらは全て、二重盲験のもとで行われた。

 第一評価項目は「心血管系死亡、心筋梗塞、ASC再発による入院、または脳卒中」だが、6〜24か月(中央値:721日)の追跡期間中、早期高用量群の14.4%、慢性期通常量群の16.7%で発生し、有意差は認められなかった(p=0.14)。個々のイベントで比較しても両群間に有意差はなかったが、心血管系死亡は相対的に25%の減少傾向を示していた(p=0.05)。

 年齢、性別、LDLコレステロール値などで分けたサブグループで解析しても、早期高用量群で第一評価項目が有意に減少していたサブグループはなかった。

 興味深いのは、両群の血中C反応タンパク(CRP)濃度(中央値)だ。試験開始1カ月後のLDLコレステロール値が、慢性期通常量群の124mg/dLに対し早期高用量群では62mg/dLまで低下していたにもかかわらず、CRP濃度は前者が2.5mg/L、後者が2.4mg/Lで有意差がなかった。試験開始8カ月後のLDLコレステロール値は早期高用量群で66mg/dL、慢性期通常量群81mg/dL、CRP濃度は前者で1.5mg/L、後者も1.8mg/Lまで低下していた(ただし有意差あり)。

 第一評価項目発生率に有意差が生じなかった背景には、LDLコレステロール値を反映しない、早期のCRP濃度の接近があったと考えられる。事実、両群のCRP濃度に有意差が認められるようになる(1.7mg/L vs 1.7mg/L)試験開始4カ月後までは両群の第一評価項目発生曲線は完全に重なっている。逆に、CRP濃度に有意差が生じた4カ月後以降のみで後解析すると、早期高用量群で相対的に25%、第一評価項目発生率が有意に減少していた(p=0.02)。

 両群のCRP濃度に差がなかった当初1カ月後は、早期高用量群におけるシンバスタチンは40mg/日だったため、より早期から80mg/日に増量すれば、異なった結果になった可能性もあるという。

 Blazing氏はこれらより、シンバスタチン早期高用量服用が有用である可能性が示唆されたと評価するが、早期高用量群では筋障害発現が有意に多かったため、頻回の検査が必要になると注意している。

 本試験は報告と同時に論文が公表され、現在こちらで全文がダウンロードできる。
(宇津貴史、医学レポーター)

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