2004.08.27

【解説】飲料のポリフェノール高含有競争が過熱、ココア、コーヒーでも新製品が相次ぐ

 健康にいい植物成分として知名度が高まったポリフェノール。このポリフェノールを多く含むことを訴求する飲料の新商品が相次ぎ登場している。

 2004年に売上高400億円超が見込まれる花王のトクホ(特定保健用食品)飲料「ヘルシア緑茶」の大ヒットが、ポリフェノール高含有の競争を激化させている。「体脂肪が気になる方に適した」というトクホ表示を取得している「ヘルシア緑茶」は、茶葉に含まれるポリフェノール成分である茶カテキンを、350mL中に540mg含む。

 今回、新商品が相次いでいるのがココアとコーヒーだ。

 ココアの新製品でポリフェノール高含有が目立つのは、8月23日に新発売された二つの商品。

ココアは、明治製菓の新商品がポリフェノール量でトップ

 ココアの国内トップメーカーである森永製菓は、1杯分にポリフェノール430mgを含む「森永ココア 豆乳ココア カカオ2倍」を、同2番手の明治製菓は1杯分にカカオポリフェノールを500mg含む「大人の健康ココア テオブロ」を新発売した。

 新商品発売以前の時点で、最もポリフェノール量が多い森永製菓と明治製菓の商品を比べると、1杯分に320mgと並んでいた。森永製菓の商品は「ミルクココア カカオ2倍」(現行商品)、明治製菓の商品は「明治ココア テオブロ」(新製品「大人の健康ココア テオブロ」のリニューアル前の商品)が1杯分320mgだった。

 今回の新製品で、森永製菓は1.34倍、明治製菓は1.56倍にポリフェノール量を強化。この結果、ココアのポリフェノール高含有競争では、明治製菓が1歩抜け出た。

 明治製菓は1杯分に500mgのポリフェノール含有を実現するため、新たな製法を導入した。「厳選したカカオ豆を原料に、独自の製法で高濃度ポリフェノール約3倍(当社ミルクココア比)を実現」とパッケージに表示している。リニューアル前の「テオブロ」では「ポリフェノール2倍(当社ミルクココア比)」と表示していた。

 明治製菓はこの製法の改良に加え、1杯分の粉の量も増やした。「テオブロ」のリニューアル前は1杯分の粉は15gだったが、リニューアル後は同19gに増えた。

 これに合わせて、溶かしてのむ液の適量も増えた。リニューアル前は「お湯約100mLまたは温めた牛乳120mL」だったが、リニューアル後は「温めた牛乳約150mLまたはお湯約120mLが目安」になった。粉も液もおよそ2割増えたことになる。

 一方、森永製菓は1杯分に430mgのポリフェノール含有をどのような工夫で実現したかは、商品に表示していない。表示を見ると、1杯分の粉の量は1.2倍に増えた。従来からある「ミルクココア カカオ2倍」の20gに対し、新製品「豆乳ココア カカオ2倍」は24g。ただし、おいしい飲み方に表示されている液の量に違いはない。いずれの商品も、120mL。こちらはお湯もホットミルクも同じ量の設定になっている。

 こう見てくると、明治製菓も森永製菓も、1杯分のポリフェノール量の数値を大きくするために、いろいろと工夫していることがわかる。特に明治製菓は、「1杯に500mg」にかなりこだわったようだ。

 発売日は8月23日と同一だが、新製品発売の発表は、森永製菓が8月初めだったのに対し、明治製菓は8月半ば過ぎ。後から発表した明治製菓が、ポリフェノール高含有競争で先頭に立った。

コーヒーでは、ネスレがクロロゲン酸約2倍の商品を発売

 コーヒーの注目商品は、8月2日にネスレジャパングループが新発売した「ネスカフェ ボディ パートナー」。「コーヒーに含まれている成分クロロゲン酸を従来の約2倍に強化」と商品に表示している。

 クロロゲン酸は、コーヒーに含まれるポリフェノールの主要成分。焙煎(ばいせん)するとクロロゲン酸の一部は化学構造が変化することが知られているが、クロロゲン酸とその類似物質を含む「クロロゲン酸類」でひとくくりにすると、コーヒーの豆には重量比で6〜9%も含まれる。

 さて、この「ネスカフェ ボディ パートナー」。商品の表示に加え、新聞や雑誌の広告、あるいは電車内の交通広告などでも、「クロロゲン酸を従来の約2倍に強化」とPRしているが、クロロゲン酸の具体的な含有量については数値を公開していない。約2倍の比較対象が、同社の現行商品「ネスカフェ サンタマルタX」であると公開しているだけ。

 そこで、具体的な含有量の公表を求めたところ、100g当たりクロロゲン酸約50mgとの回答を8月20日までに得た。8月2日発売のニュースリリースが出た7月1日の数日後から、3度にわたり、問い合わせした結果、公表された数値だ。「ロットごとのデータを蓄積してきた。公表できるレベルに達した」(広報室)。

 逆算すると、「サンタマルタX」は100g中に約25mgのクロロゲン酸を含むことになる。また、「ボディ パートナー」は190g缶入り商品なので、1缶におよそ95mgのクロロゲン酸を含むことになる。

 コーヒーに含まれるクロロゲン酸の量は、ウェブで論文などを検索すると、かなり幅の広い数値が散見される。この中から、日本のコーヒー飲料に関するかなり信頼できそうな数値を見つけた。農林水産省の農林規格検査所(当時、現在は独立行政法人農林水産消費技術センター)が85年度に実施した調査研究報告をウェブで見つけた。タイトルは「高速液体クロマトグラフィーによるコーヒー入り飲料中のクロロゲン酸類およびカフェインの定量」だ。

 この中で、クロロゲン酸の含有量が報告されている缶コーヒーは3商品。100mL中のクロロゲン酸の含有量の多い順に、P社商品(容量190mL)が51.5mg、U社商品(容量250mL)が31.3mg、U社商品(容量250mL)が10.0mgだ。

 この結果と比較すると、クロロゲン酸約2倍のネスレの新製品「ボディ パートナー」は、18年前のP社の商品とほぼ同じ濃度のクロロゲン酸を含むことになる。

 農林規格検査書の報告を見ると、クロロゲン酸が加熱などの工程により、化合物の構造が変わることがわかる。クロロゲン酸の正式な化合物名は、5-カフェオイルキナ酸で、5-CQAと略記される。

 加熱などにより、この5-CQAの一部は、異性体の3-QCAに変わるとの結果が出ている。多くのコーヒーの説明書には、クロロゲン酸は加熱により分解されると書かれている。すなわち、5-CQAが分解して、カフェ酸(コーヒー酸ともいう)とキナ酸の二つに分かれる。

 ここで一つの疑問点が出てくる。
 コーヒー豆に含まれるクロロゲン酸(5-CQA)が焙煎などの過程で、一部が3-CQAに変わったり、カフェ酸やキナ酸に分解したとして、健康効果にどのような影響があるかということだ。

 実のところ、この答えはわかっていないようだ。カフェ酸やキナ酸も、健康に寄与することが知られている成分だ。

 そもそもコーヒーのクロロゲン酸の健康効用は、著名は医学誌「ランセット」の論文(Lancet 360:1477-78,2002)などで、コーヒーが糖尿病の発症リスクを低減するなどの研究成果が論文発表されて、注目を浴びるようになった。

 糖尿病予防など健康によいコーヒーの成分としては、まず、カフェインが候補になるが、これらの論文では、コーヒーと同じくカフェインを多く含む茶の飲用では、この効果が認められなかったことから、コーヒーに含まれるカフェイン以外の成分が、この効用に寄与しているとみられている。

 そこで、コーヒーに特に多いポリフェノール成分であるクロロゲン酸がクローズアップされてきたのだ。

 いずれにしろ、コーヒーのクロロゲン酸の含有量が約2倍として販売されている商品が、実は他社の別の商品と比較したら同じ程度であるという可能性が今回、改めて明らかになった。

茶、ココア、コーヒーは、おいしさが基本?

 そもそも、健康成分として知名度が高まってきたポリフェノールは、もともとは雑味や苦味の原因になると知られてきた成分。ポリフェノールの増量は、ともすれば、おいしさに悪影響を及ぼしかねない。

 ポリフェノール高含有とおいしさの両立が難しいことは、特にコーヒーの場合には、わかりやすい説明ができる。コーヒーのクロロゲン酸量を増やしたければ、通常のレギュラー・コーヒーの原料となる「アラビカ種」に比べてクロロゲン酸の含有量が多い「ロブスター種」と呼ばれるコーヒー豆を、原料に使えばよい。

 ロブスター種は、アラビカ種に比べ価格が安いうえに、クロロゲン酸などのコーヒー特有の成分含有量が多いため、同じ豆の量からより多くのコーヒーを抽出できる。だから、インスタントコーヒーの原料には、一般にロブスター種が多く使われているという。

 コーヒーの歩留まりが悪いにもかかわらず、アラビカ種が高値で取引されているのは、アラビカ種のコーヒー豆でいれたコーヒーは「おいしい」からだ。700種類ともいわれる香り成分など、コーヒーの味は総合的に評価される。おいしさ、という観点からいうと、クロロゲン酸は雑味成分なのだ。

 茶もココアもコーヒーも、もともとおいしさが評価されて飲まれる「嗜好(しこう)飲料」。嗜好飲料のおいしさの一部といえる「香り」が数々の健康効果を発揮することは最近、次々と明らかにされているが、これに続き、おいしさの健康効用も次第に解明が進んでいくはず。

 やはり茶やココア、コーヒーはおいしくいただきたい。茶カテキンやカカオポリフェノール、クロロゲン酸など、知名度が急速に高まったポリフェノール成分は、あくまでも嗜好飲料の健康効果の一部を説明しているに過ぎない。(河田孝雄)

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