2004.08.24

人工透析器介して西ナイル熱ウイルスのヒト−ヒト感染、米国での疑い例をCDCが報告

 米国で、人工透析器を介した感染が疑われる西ナイル熱患者の発生が報告された。西ナイル熱は蚊を介したヒト−ヒト感染は起きないとされるが、臓器移植や針刺しによる感染が起こることは既に知られている。今後の日本上陸に備え、医療施設の感染対策責任者は十分な感染制御体制を準備しておく必要がありそうだ。

 本件は、2003年8月に米ジョージア州で同じ日に同じ透析センターの1台の人工透析器を使用した3人が西ナイル熱ウイルスに感染し、うち2人が発症したもの。米疾病対策センター(CDC)の感染症週報(MMMR)2004年8月20日号でジョージア州公衆衛生局のC.Smith氏らが報告した。

 ジョージア州で2003年8月末に血液透析を受けた末期腎不全の77歳男性と、2型糖尿病と末期腎不全を併発した60歳の男性が西ナイル熱抗体陽性となり、77歳男性は回復したが、60歳男性は入院20日目に高熱と呼吸困難を起こして死亡した。当時、患者の居住区域では西ナイル熱の流行はなく、調査の結果、2人が同じ日に同じ透析器で血液透析を受けていたことが判明した。

 さらに同じ日に前述の患者2人の間に同じ透析器で血液透析を受けた71歳の女性について調査したところ、この女性は無症状だったが、透析後42日目に血清抗体価を調べたところ、IgGの中和抗体価がセントルイス脳炎ウイルスについて1:20、西ナイル熱ウイルスについては1:320という値が得られた。

 しかし、血液回路や透析時に加える薬剤用のシリンジ、注射針などはすべて1回の透析ごとに交換・廃棄される。3人に共通に使われた薬剤はなく、ほかの日に同じ透析器を使用した患者の抗体価はすべて陰性だった。

 一方、発症した2人の男性患者の自宅は400mほどしか離れておらず、他の1人の女性患者の自宅も2km弱の距離にあるため、西ナイル熱ウイルスを保有した蚊による自然感染の可能性も考えられた。しかし、調査の結果、西ナイル熱ウイルス陽性の蚊は近辺からは発見されていない。

 本論文で取り上げられた患者群の感染経路は結局確定されていない。しかし、医療施設における交叉感染が強く疑われる事例と言える。本報告について、MMMRの編集者は、透析患者は免疫力が低下していることが多く、感染症に対しては極めて脆弱であるため、透析施設は常に厳格な感染制御体制を敷くべきだとしている。

 本論文の原題は、「Possible Dialysis-Related West Nile Virus Transmission Georgia, 2003」。現在、全文をこちらで閲読できる。(中沢真也)

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