2004.08.09

西ナイル熱、ヒト−蚊−ヒト感染しない理由は血中ウイルス数にあり

 西ナイル熱ウイルスはウイルスを持った蚊に刺されることで人間に感染するが、感染者から別の人への2次感染や、感染者を刺した蚊がほかの人を刺しても感染しないとされる。ところが、蚊が西ナイル熱ウイルスに感染した鳥を刺すと、刺した蚊はウイルスを保有し、人間や別の鳥を刺すことで感染を広げていく。

 この違いは、鳥と人で体内におけるウイルスの増殖量がまったく異なることによる。国立感染症研究所ウイルス第一部の高碕智彦氏によると、西ナイル熱ウイルスは、人間の血液中では1mL当たり100〜1000程度にとどまるという。蚊が1回に吸う血液量はおよそ2μLなので、西ナイル熱ウイルスの感染者を刺した蚊が“採取”するウイルス数はわずか0.2〜2個にとどまる計算になる。このため、理論的には皆無ではないが、蚊を介して人から人への感染が起きることはまず有り得ない。

 一方、感染した鳥の血中では、1mL当たり100万〜1億に増殖する。感染鳥を刺した蚊は2000〜20万ものウイルスを保有することになる。このため、鳥を刺した蚊は、ほかの鳥や人間を容易に感染させることができる。

 西ナイル熱ウイルスを持った蚊が航空機内に紛れ込み、不幸にして誰かを刺しても感染者の発生は搭乗した乗客、乗務員に限られる。しかし、もしその蚊が到着地で生きたまま、機内から脱出して鳥を刺せば、到着地は西ナイル熱の新たな感染地と化す危険性が生じることになる。1999年に米国に上陸した西ナイル熱ウイルス株は、1998年にイスラエルで分離された株に極めて近いという。自然要因か人為的な原因かは不明だが、イスラエルから米国へ何らかの形でウイルスが移動した可能性は否定できないことになる。(中沢真也)

■ 参考図書 ■

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