2004.08.09

医師のキャリアパス塗り替える研修医

 臨床研修必修化の動きは、わが国の医療全体に影響を与えそうだ。
 
 昨年、医師臨床研修マッチングプログラム(いわゆるマッチング)が開始されたことで、学生は大学病院や市中病院を含む、全国の病院を横並びにして選べるようになり、「臨床研修は大学病院で」という固定観念を持たなくなった。結果として、1999年度には25%しか存在しなかった市中病院で研修を受ける研修医が、この5月にはほぼ半数にまで急増した。

 この市中病院への大移動は、研修医にとっては、どこにでもある疾患を、医師としてのスタートラインで、できるだけ多く診療しておきたいという思いが表面に出た結果にすぎないのだが、病院側はこの動きを戦々恐々と注視している。

 大学病院は、病院を支えてきた各種講座の医局員が、外部に流出してしまうことを恐れている。臨床、研究、教育という三本柱を支えてきた豊富なスタッフは、人事を握ってきた医局の力によって、うまく動いていたからだ。臨床研修必修化に伴って、市中病院に研修医が流れてしまい、2年間の研修が終わってからも大学に戻ってこないということになれば、大学の人材不足、さらには大学の力の減退を招いてしまう可能性がある。

 市中病院にとっては、今回の制度改正を機に、自分の病院に愛着を持った優秀な医師を育て上げようと必死になっている。優れた研修体制を整え、多くの研修医を集めることができれば、彼らを教える既存のスタッフも含めた全職員の能力を底上げできることを、院長ら病院幹部は狙っている。

 2004年8月号の日経メディカルでは、初期研修に絞って、臨床研修が今、どのように運営されているのかを報告している。その結果、初期研修においては、市中病院に主導権が完全に移っているとの印象を受けた。市中病院は、施設によって、質にばらつきもあるが、いずれは平準化されてきそうな勢いがある。

 もはや臨床研修必修化は、卒後2年目までの医師だけの問題ではない。この初期研修を終えた学生をどのように立派な医師にしていくのか、そのための研修はどこで行われてくるかが、今後の問題となってくる。

 市中病院が、専門的な医療も含む後期研修を行えないのならば、初期研修を終えた研修医は大学病院に戻ってくるだろう。逆に、市中病院が後期研修までも担えるのであれば、一度外の病院に移った者は、もはや大学病院には戻る必要がないのかもしれない。

 これからの研修医たちが、医師のキャリアパスを大きく塗り替えていくことは間違いがない。

(星良孝、日経メディカル

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