2004.07.28

【編集委員の目】 新展開見せる外国人看護師問題、求められる医療機関の本気

 「Japan $1856――」。構造改革特区の第5次提案募集で、フィリピン人看護師の日本への受け入れを求める医療機関の提案を見て、今から十数年前、マニラにあるフィリピン政府の役所で、日本での看護師の労働条件を決めた書類を見た時の驚きを思い出した。看護師輸出国であるフィリピンは、その頃から、日本の医療労働市場を狙っていたのだ。

 外国人看護師の招へいは、看護師不足が深刻だった90年代初め頃から、日本の医療界で真剣に検討されてきた。民間団体による中国やフィリピンからの招へいの動きもあったが、実現したのはある協同組合によるベトナム人看護師の養成事業ぐらい。しかも、現地での日本語教育に加え、日本で3年間の看護師養成所を卒業して国家試験に合格することが条件にもかかわらず、研修として4年間しか日本で働けないという厳しい制約つきだった。

 このベトナム人看護師養成事業を主催してきた協同組合や、研修生として受け入れてきた医療法人の理事長らが、今回特区での外国人看護師受け入れ提案者に名を連ねている。彼らによれば、1993年から現在までに約60人のベトナム人の日本の看護師学校への留学を支援し、既に36人が看護師として日本の病院で就労研修に入ったという。しかしこの事業は、規制を乗り越えるために膨大なコストを要するため、今年、新規募集を打ち切ったそうだ。

 外国人看護師受け入れを求める日本の医療機関の声は、看護師の需給関係が好転するとともに小さくなっていったように思われる。外国人看護師を、看護婦不足解消の一手段としか考えていなかった医療機関も少なくなかったからだろう。

 だが、今回はFTA(自由貿易協定)協議の場で、フィリピン側がフィリピン人看護師の受け入れや在留資格の緩和を求めている。もはや医療界だけの問題ではなく、国家間の問題に発展しているわけだ。それだけに受け入れを求める日本の医療機関側にも、日本人看護師と同等のきちんとした処遇が求められるのはいうまでもない。

 安上がりの看護労働力の確保という考えだけでは、後で国家間のトラブルにもなりかねないことを認識すべきだろう。(井上俊明、医療局編集委員)

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