2004.07.26

施設内の感染性胃腸炎流行でピロリ菌感染者が増加、吐物、便など介して感染の可能性

 幼稚園や小学校などでは、冬季を中心にノロウイルスやロタウイルスによる感染性胃腸炎の集団感染がしばしば発生する。その際、吐物や便などの処置をより厳重に行った方がよさそうだ。施設内における感染性胃腸炎の流行で下痢患者が多数発生した後、ピロリ菌に新たに感染する患者が続発することがフランスにおける前向き観察研究で明らかになった。フランス国立科学研究センター(CNRS)Lille生物学研究所のRemi Laporte氏らの報告で、英医学会誌British Medical Journal 2004年7月24日号に掲載された。

 Laporte氏らの研究グループはフランスのある神経学的障害児施設の全入所者112人を対象とし、2001年5月から1年間の観察研究を実施した。入所者は5棟に別れ、数年にわたって共同生活する。

 研究グループは、まず、開始時に糞便中ピロリ抗原検出キット(米Meridian Bioscience社製)を用いてピロリ菌感染者を特定した。感染率は42%(112人中47人)と高率だった。次に、開始時に感染していなかった65人について、毎週便サンプルを採取し、凍結保存した。観察期間の最後に開始時の便と比較し、ピロリ菌陽性に変わっていた場合は、その患者の便サンプルを遡って調べ、陽転した時期を特定した。開始時点では陰性だった入所者のうち、7人がピロリ菌陽性となった。

 観察期間中、A〜Eの5棟のうち、E棟のみで4回にわたり、感染性胃腸炎の流行を疑う集団の急性下痢の発生があった。ピロリ菌陽転した7人のうち、5人がE棟居住者であり、他の2人も集団活動などを通じてE棟居住者と濃厚接触していたことが明らかになった。ピロリ菌の新規感染の発生は感染性胃腸炎の流行時期の3〜11週間後に起きており、新規感染者7人のうち5人の感染時期は、最も大きな感染性胃腸炎の発生があった2001年7月の流行後に集中していた。

 Larorte氏は「非侵襲的な検査に限ったものの、発生順序は感染性胃腸炎の流行がピロリ菌感染の原因になっていることを示唆している」としている。本研究は短報であり、感染症による急性の下痢や嘔吐によってピロリ菌の大量排出があるのかどうかなど、因果関係を補強する検証には言及していない。

 感染性胃腸炎の流行がピロリ菌感染の一因になっているのだとすれば、感染性胃腸炎発生時の標準的感染対策に関する学校関係者や家庭への啓蒙がいちだんと重要になると言えそうだ。

 本論文の原題は「Acquisition of Helicobacter Pylori infection after outbreaks of gastroenteritis: prospective cohort survey in institutionaised young people」。現在、全文がこちらで閲読できる。(中沢真也)


■ 関連トピックス ■
◆ 2003.12.3 市民向けのウイルス性胃腸炎の吐物処理法を香港保健局がHPに掲載

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