2004.07.22

焼き魚は脳卒中の原因「心房細動」を予防する?!−−米国CHS研究から判明

 お年寄りに多く、脳卒中の原因にもなる「心房細動」という不整脈を、焼き魚をよく食べる人は発症しにくいことが分かった。米国の高齢者約4800人を12年間追跡したCHS(Cardiovascular Health Study)研究の結果。魚好きの人に脳卒中が少ないことは既に報告されていたが(JAMA;285,304-12,2001など)、原因の一つである心房細動が少ないことが分かったのは初めて。研究論文は、米国心臓協会(AHA)が発行する「Circulation」誌電子版で、雑誌掲載に先立ち7月19日に公開された。

 心房細動は、心臓の心房という部分が時々ぶるぶると震えるタイプの不整脈。心臓の老化現象と考えられていて、高齢になるほど発症率が上がり、日本人では70歳代の4〜8%、80歳代では10%以上の人に心房細動がある。心房細動があっても、心臓のポンプ部分(心室)は大部分の人で正常に働いているため、息切れや胸苦しさなどの症状は特に出ないことが多い。

 しかし、心房細動があると、心房で血液の流れがよどんで血栓(けっせん)ができやすくなる。この血栓が飛んで脳の血管につまると、脳卒中の一つである「心原性脳塞栓(そくせん)症」を引き起こす。

 最近では、元プロ野球監督でアテネ五輪野球日本代表監督を務める長嶋茂雄氏が、この心原性脳塞栓症にかかったことをご記憶の人も多いだろう。

 CHS研究には、米国在住の65〜100歳(平均年齢72.8歳)の男女5201人が参加。研究開始時点で心房細動を起こしておらず、魚を含む食生活データがそろっていた4815人を解析対象にした。

 参加者は毎年、心電図検査を含む健康診断を受診。研究期間中に入院した場合は、カルテで病名を調べた。12年間で、4815人中980人が新たに心房細動を起こした。

 研究グループは、食生活データの中の魚料理を、「焼き魚」と「魚のフライ/フィッシュサンドイッチ」に分けて解析。すると、年齢などで補正した後も、焼き魚をよく食べる人(週1〜4回)は、ほとんど食べない人(月1回未満)より、心房細動の発症率が29%低くなった。

心房細動の予防効果があるのは“赤身の魚”か

 面白いのは、「魚のフライ/フィッシュサンドイッチ」を食べる頻度で解析すると、結果がまったく逆になること。魚のフライなどを週1〜4回食べる人では、月1回未満の人より、年齢などで補正した後も心房細動になる割合が24%多かった。

 どうして調理法の違いで結果が正反対になったのか−−。研究グループは、「結果を左右したのは調理法の違いではなく、調理に使う魚の種類の違い」と考えている。

 米国で「焼き魚」といえば、マグロなど赤身の魚のソテーがほとんど。一方、魚のフライに使われるのは、タラなど白身の魚だ。一般に、赤身の魚には白身の魚より、脂質がたくさん含まれている。

 よく知られているように、魚肉の脂質にはエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といった、オメガ3系の多価不飽和脂肪酸が多い。研究参加者の血液を解析すると、焼き魚をたくさん食べる人ほど血中のEPA・DHA濃度が高かったが、魚のフライやフィッシュサンドでは相関がなかった。

 オメガ3系の脂質には血液をサラサラにするなどの健康効果が知られているが、今回わかった“心房細動の予防効果”は「オメガ3系油の新たな健康効果なのでは」と研究グループはみている。

 この論文のタイトルは、「Fish Intake and Risk of Incident Atrial Fibrillation」。アブストラクトは、こちらまで。
(内山郁子)

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