2004.07.21

ライオン、歯周病菌の“巣窟”に浸透可能な殺菌剤の効果を確認

 ライオンは、ポピュラーな殺菌剤の一つであるイソプロピルメチルフェノールが、歯周病菌の巣である「バイオフィルム」の内部に浸透し、強い殺菌作用を発揮することを世界で初めて確認したと発表した。

 バイオフィルムとは、細菌などの分泌する粘性の物質内に複数の細菌が共存する環境で、米Montana州立大学バイオフィルム工学センター長のJ. W. Costerton氏らが1970年代後半に提唱したとされる。台所のシンクや浴槽のぬめり、人間の口腔内などに存在し、歯周病や尿路感染症の原因にもなっている。通常では共存できない多種類の細菌が棲息し、栄養供給や老廃物の排出を行う水路まであることが明らかになっている。

 ライオンは、歯周病菌を含む4種類の細菌を用い、口腔内のバイオフィルムに近い性状のバイオフィルムモデルを人工的に構築することに成功し、これに対する殺菌作用について、約100種類の薬剤を評価した。その結果、殺菌剤として一般的に利用されているカチオン性化合物よりも、非イオン性化合物で適度な疎水性を持つ物質の方が、バイオフィルムに対する浸透性が優れていることを発見した。そこで、非イオン性で歯周病菌に対する殺菌作用を持つ化合物を検索した結果、イソプロピルメチルフェノールが浮かび上がった。

 イソプロピルメチルフェノールはごくポピュラーな殺菌剤で毒性、刺激性が低く、化粧品や虫さされのかゆみ止めクリームなどにも配合されている。一般的なオーラルケア製品に配合されている塩化セチルピリジニウム(CPC)やトリクロサンと比較すると、浮遊性細菌に対しての殺菌力は10分の1程度(同じ殺菌効果を発揮するためには10倍程度の濃度が必要)と弱い。

 しかし、バイオフィルムに対しては強い殺菌力を発揮する。ライオンの実験によると、実用的な0.1%濃度で3分間処置を行った場合、CPCやトリクロサンでは処置後の菌数(バイオフィルム上のコロニー数)が対照群の数分の1〜10分の1程度の減少にとどまったのに対し、イソプロピルメチルフェノールでは1万分の1以下になったという。

 同社では、死菌と生菌を色で識別できる特殊な蛍光色素で染色して、共焦点レーザー顕微鏡で観察し、CPCやトリクロサンではバイオフィルムの表面だけが殺菌されたのに対し、イソプロピルメチルフェノールでは内部まで殺菌されていることを確認している。

 ライオンではこうした研究成果をもとに、歯周病予防用オーラルケア製品の商品化を目指す考えだ。ただし、イソプロピルメチルフェノールを配合した歯磨剤などは既に商品化されており、歯周病菌を含むバイオフィルムへの薬剤到達性などの機能面で差別化を図っていく必要がありそうだ。

 バイオフィルムは確立された学術用語で、1980年前半から尿道カテーテルによる尿路感染症の原因などとして注目されるようになった。原子力発電の冷却水取水における障害要因として対策が行われるなど、環境工学の領域でも大きな関心が持たれている。バイオフィルムに関する概論や文献情報は、米Montana州立大学バイオフィルム工学センターのWebサイトによく集積されている。

 ライオンのプレスリリースはこちらまで。(中沢真也)

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