2004.07.20

説明内容に対する理解の程度が充分かどうか曖昧な場合 家族の意見はどこまで尊重されるべきか

 ネット講座「まさかの時の医事紛争予防学」の読者から、「治療の選択・決定権」について投稿がありました。「超高齢者と呼ばれる方々が増えてきている昨今、痴呆とは言えないまでも、説明内容に対する理解の程度が充分かどうか曖昧な場合が多々あります。そのような場合に、家族の意見はどこまで尊重されるべきでしょうか」と問いかけるものです。以下の事例もご提示いただきましたので、これをもとに、ネット講座「まさかの時の医事紛争予防学」の読者の方々に、アンケートを実施しました。その結果を報告します。

 重要な案件であると考えまして、MedWaveの会員の方々にも報告させていただきます。ご意見、ご感想は、編集部( medwave@nikkeibp.co.jp )までお願いいたします。

提示事例】

 80歳代の方が急性大動脈解離(Stanford A型)で救急搬送された場合。

 患者は日常生活において、特に痴呆の様な症状はなく、コミュニケーションも問題なく、食事などの摂取に関しても完全に自律している方でした。しかし、ご高齢であるため、医学的な事はいかに分かり易く説明したつもりでも、充分理解できているかどうか曖昧な印象を医療従事者が持っています。患者は急病とはいえ、話を聞き、自らの意思を伝えることは充分可能な状態とします。手術しなければ、間違いなく死んでしまうであろうことや、手術そのものにもリスクがあることは説明し、本人からは手術して欲しいという意思が述べられました。しかし、医療従事者は患者の理解度に不安があることから、家族にも説明します。そこで家族は「手術して欲しくない」と言い出しました。

 治療の選択・決定権は患者本人にのみあると思われるのですが、患者が果たして「充分理解している」といえるかどうか不安であるという理由で、医療従事者は家族の意見を尊重しようとしました。それが、本人の意思とは異なる場合はどうすればいいのでしょうか。


アンケート結果】

 6月15日から30日までに、37人の方から回答をいただきました。

 アンケートではまず、上記の事例で、「手術しない場合の死亡の可能性>手術した場合の死亡の可能性」と医師が判断した場合、本人が承諾すれば家族が反対しても手術するべきかどうかを尋ねました。

 結果は、「手術するべきだと思う」は40.5%で、「手術するべきでないと思う」も40.5%となり拮抗していました。「分からない」は18.9%でした。

*グラフは以下をご覧ください。


 その理由については次回ご報告します。

 実際に、このような事例を経験されたことがあるかどうか尋ねたところ、「ある」は43.2%、「ない」は56.8%でした。半数近くの人がこのような難しい事例に直面していました。

*グラフは以下をご覧ください。



 上記の場合、「手術しないことは、罪になる可能性があるかどうか」を聞きました。それによると、「可能性があると思う」との回答は48.6%で、「可能性はないと思う」の32.4%を上回っていました。「分からない」は18.9%でした。

*グラフは以下をご覧ください。



 アンケートではさらに「たとえば、手術したのですが過失無く合併症が生じたとします。その後延々と治療が長びいた場合、家族が『看病に関する肉体的、精神的、経済的苦痛を生じたのは家族の意思を無視した病院の責任』として訴訟を起こしました。このような論法は果たして成り立つのでしょうか」と尋ねました。

 結果は、「成り立つと思う」が37.8%で、「成り立たないと思う」の48.6%より少ない回答でした。「分からない」は13.5%でした。

*グラフは以下をご覧ください。



 次回は、自由意見およびこの結果を踏まえた法律の専門家のコメントなどをお届けする予定です。

 最後になりましたが、アンケートにご協力いただきありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。(三和護)

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