2004.06.28

若年者の未治療「仮面高血圧」、3分の1超が6年後には診療所血圧も高血圧に

 診療所血圧は正常なのに家庭血圧などその他の血圧が高値を示す「仮面高血圧」が、ここ数年注目を集めている。仮面高血圧は、高齢者において心血管系リスクの一つであることが示されている(米医師会雑誌Journal of American Medical Association誌2004年3月17日号掲載の「Cardiovascular Prognosis of"Masked Hypertension" Detected by Blood Pressure Self-measurement in Elderly Treated Hypertensive Patients」を参照)が、若年者ではどのような意味を持つのだろうか。

 Hypertension誌2004年6月21日号に掲載されたイタリアPadova大学のPaolo Palatini氏らによる研究によると、降圧薬を服用していない若年仮面高血圧の3分の1が診療所高血圧に移行するという。

 対象となったのは、診療所血圧でステージ1高血圧(140〜159/90〜99mmHg)が疑われるが、降圧薬を服用していないない平均33歳(18〜45歳)の662例。これらの症例を、3カ月間の観察期間中に診療所血圧、24時間自動血圧計で測定した昼間血圧ともに正常となった正常血圧群(124例)、昼間血圧だけが高血圧を示す「仮面高血圧」群(120例)、いずれも高血圧だった高血圧群(418例)の3群に分けた。ただし、白衣高血圧は除外している。診療所血圧正常値は140/90mmHg未満、昼間血圧は135/85mmHg未満を正常値とした。

 3群の背景因子を比較すると、肥満度(BMI)と年齢は、正常血圧群<仮面高血圧群<高血圧群の順で増加するという有意な傾向が見られたが、左室肥大、微量アルブミン尿、喫煙、アルコール・コーヒー消費、活動性には有意差は見られなかった。

 正常血圧群の診療所血圧は129/82mmHg、仮面高血圧群では130/84mmHgだった。また、正常血圧群の124例中120例が、JNC 7(米国高血圧ガイドライン)の「高血圧予備域(Prehypertension)」に属する血圧だった。

 およそ6年間の追跡期間後、追跡期間中の24時間血圧を入手できた492例が解析対象とされた。評価項目である「診療所血圧値で高血圧(複数回測定)」または「降圧薬服用」となっていたのは224例。評価項目に至った割合は正常血圧群の19%に対し仮面高血圧群では35%と有意(p=0.019)に高かった。比例ハザード解析で評価項目に達するリスクを比較すると、仮面高血圧群では正常血圧群の2.25倍で有意に高かった(95%信頼区間: 1.33〜3.86)。

 本研究では心血管系イベント・リスクの低い若年者を対象としているため、臨床イベントは評価していない。しかし、1) ステージ1高血圧の疑いで紹介されてきた若年者では、診療所血圧が正常値を示してもおよそ半数は仮面高血圧だった、2) それらの仮面高血圧例では3分の1が6年以内に診療所血圧値も高血圧に移行した──ことから、診療所血圧が一過性に上昇した場合や仮面高血圧が認められる場合には、NC7(米国高血圧ガイドライン)の勧告には一致しないものの、薬物治療が有用なのではないかとPalatini氏らは問い掛けている。

 本論文のタイトルは「Prevalence and Clinical Significance of Isolated Ambulatory Hypertension in Young Subjects Screened for Stage 1 Hypertension」。現在、アブストラクトがこちらで閲覧できる。(宇津貴史、医学レポーター)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. トイレにこそ、人間の尊厳がある Dr.西&Dr.宮森の「高齢者診療はエビデンスだけじゃいかんのです」 FBシェア数:479
  2. 「どうしてこんな急に!」急変時の家族対応は 平方眞の「看取りの技術」 FBシェア数:12
  3. 輸液の入門書 医学書ソムリエ FBシェア数:0
  4. オピオイドの用量調節とスイッチングの基本方法 国分秀也の「ゼロから学ぶオピオイド」 FBシェア数:105
  5. わいせつ容疑の外科医、初公判で無罪を主張 「乳腺科医のプライドにかけて無罪を主張します」 FBシェア数:582
  6. 「真面目なメンタルケア」が真面目ちゃんを苦しめる 研修医のための人生ライフ向上塾! FBシェア数:0
  7. 難治性皮膚潰瘍を再生医療で治す リポート◎大リーガー田中将大投手のケガも治したPRP療法とは? FBシェア数:20
  8. インフル入院患者、届出数が100人を超える インフルエンザ診療Next:トピックス FBシェア数:109
  9. 医療者は認知症家族との暮らしが分からない 患者と医師の認識ギャップ考 FBシェア数:196
  10. 下血? 血便? 赤いの? 赤くないの? 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:180