2004.06.21

「ERPで日本の医療機関の経営効率向上を実現する」 −−独SAPのヘラルド・ピッツ氏

 ERP(Enterprise Resource Planning)システムベンダー最大手の独SAPは、日本の医療市場向けERPソリューションの提供に本格的に乗り出す。ERPは、企業などの基幹系業務システムを統合化したソフトウエア・パッケージで、SAPは企業内の会計・物流・販売や物品管理、人事などの各業務システムの情報を一元化し、経営の効率化を実現するためのソリューションとして注目を集めている。独SAPのヘルスケア・高等教育&リサーチ部門の責任者であるヘラルド・ピッツ氏に、国内における今後の戦略を聞いた。

――SAPの医療分野におけるこれまでの取り組みを聞かせてほしい。

 SAPはこれまでERPソリューション製品の「SAP R/3」などを全世界的に提供してきた。主に企業における人事管理や物流管理などで評価を得てきたが、90年代からは医療分野のソリューションの提供を始めている。現在、全世界で1000強の医療機関がSAPのソリューションを導入し、財務や患者管理などの効率化などにつなげている。

――日本市場に本格的に乗り出す理由は。

 現在、医療分野でのSAPの顧客は欧州や中近東、北南米が中心だが、医療機関の数や質の高さを考えると、今後は日本は外せない重要なマーケットになる。また、日本の医療機関の経営者も、経営効率の改善に対して関心が高く、ニーズは十分にあると判断した。

――日本の医療分野におけるITの導入は遅れているが、ERPのようなシステムをどのように売り込んでいくのか。

 現在の日本の状況は、数年前のドイツとよく似ている。ドイツ国内の医療機関もIT化は進んでおらず、経営効率の改善や医療の透明性の確保に向けた動きは鈍かった。だが、病院経営者などに経営の効率化やプロセスの変革などの話をすると、熱心に耳を傾けてくれ、次第にIT化で業務改善を実現する流れができていった。

 もちろん、日本とは環境が異なるので、同じようなプロセスが使えるかどうかは未知数だが、業務改善にITを活用するという流れは作れると考えている。

――ERPソリューションは病院経営にどのように役立つのか。

 ヘルスケア分野でのERPソリューションは、患者管理や診療・治療管理、看護管理、物流管理など多岐にわたる。必ずしもすべてのソリューションを一度に導入する必要はなく、業務別のパッケージ・ソリューションを個別に導入し、それぞれの業務効率を改善していくことも可能だ。なお、対象となる医療機関の規模によらず、SAPのソリューションは利用可能だ。海外では、24床の病院が導入しているケースもあれば、3000床以上で利用しているところもある。

 ちなみに、スペインやオーストリアなどでは、地域自治体でSAPの製品を一括購入して、その地域内の公立病院などが、ソフトの機能を“貸し出す”ASP(Application Service Provider)方式でSAPのソリューションを使えるようにしている。地域の大半の病院が同一のソリューションを使っているので、病院間の経営指標のベンチマークなどが可能になっている。

――日本での販売戦略と今後の目標は。

 販売方法は、直販やパートナーによる販売のほか、ASP方式による提供などを考えている。まだ日本においてはどの方法が最適なのか情報を集めているところだが、さまざまな提供形態を組み合わせ、医療機関が最もコストを削減できるような方式を選べるようにする。

 日本では、100社を超える大手SIベンダーとパートナー関係を結んでいるので、パートナーとの協力関係も非常に重視している。今年はまず5医療機関での導入を目指しており、これらの成功事例を他の医療機関へ紹介する形で、市場への足場を築いていきたい。
(聞き手;川崎慎介、日経ヘルスケア21

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