2004.06.16

筋弛緩薬チザニジンとSSRIフルボキサミンの併用で高度の血圧低下 CYP1A2阻害による相互作用、現時点で添付文書に記載なし

 筋弛緩剤として用いられるチザニジン(商品名:テルネリンほか)と、SSRIのフルボキサミン(商品名:ルボックス、デプロメール)を併用すると、チザニジンの血中濃度が大きく上昇し、その影響で高度の血圧低下が起こる――。10人の健康成人を対象にフィンランドで行われた無作為化クロスオーバー試験で、このような相互作用が明らかになった。この相互作用に関しては、これまでは世界的に知られておらず、6月16日現在、わが国のどちらの薬剤の添付文書にも記載はないが、専門家は「併用禁忌に相当する」と警告している。この研究結果は、米Clinical Pharmacology Therapeutics誌の2004年4月号で報告された。

 本研究では、成人健康男性10人にフルボキサミン100mgあるいはプラセボを1日1回4日間経口服用させ、5日目の朝に4mgのチザニジンを経口服用させた後に、経時的に採血や血圧測定などを実施した。その結果、フルボキサミンを投与することによって、チザニジンの AUC(0→∞)は平均で33倍(14〜103倍、p=0.000002)、最高血漿中濃度は平均で12倍(5〜32倍、p=0.000001)増加し、血中半減期は1.5時間から4.3時間に延長した(p=0.00004)。またフルボキサミン投与群では、プラセボ投与群に比べて、収縮期血圧が平均35mmHg低下(27〜44mmHg、p=0.000009)、拡張期血圧が平均20mmHg低下(15〜25mmHg、p=0.00002)、心拍数が平均4拍/分減少(2〜7拍/分、p=0007)などの変化が認められ、これらはチザニジンの血中濃度上昇に起因するものと考えられた。特に収縮期血圧は、フルボキサミン投与群で平均79mmHgまで低下しており、危険性が高かったとしている。

 この相互作用は、フルボキサミンが、チザニジンの代謝酵素を阻害するために起こると考えられている。具体的には、フルボキサミンは、肝薬物代謝酵素チトクロームP450のサブタイプ1A2(CYP1A2)を強く阻害することが知られている。一方、チザニジンの代謝に関与するチトクロームP450のサブタイプはこれまで不明だったが、今年3月に、前記の臨床研究を行った同じ研究者が主にCYP1A2で代謝されることをin vitro試験で確認し、報告していた(Bri. J. Clin. Pharmacol., 57: 349-353 ,2004)。

 この論文で報告された相互作用について、薬物間相互作用に詳しい九州大学大学院薬学研究院臨床薬学講座教授の澤田康文氏は、「臨床現場では十分に併用され得る組み合わせ。併用時のチザニジンの血中濃度上昇は顕著であり、血圧低下のリスクを考えれば、“併用禁忌”に相当するものと考えられる。現時点では添付文書に記載がなく、改訂にはまだ時間がかかる可能性もあるが、今後この2剤は併用すべきではないし、もし今現在、併用している例があればすぐに服用を中止させる必要がある。チザニジンには数種類のジェネリック医薬品があるので、その点にも注意が必要だ」と警告する。

 また同氏は、「相互作用を回避するには、フルボキサミンを、同じSSRIでCYP1A2の阻害作用がないパロキセチン(商品名:パキシル)や、SNRIのミルナシプラン(商品名:トレドミン)に変更する方法などが考えられる。チザニジンを他の中枢性筋弛緩剤で代替することで相互作用を回避できるかどうかは、現時点では不明」としている。

 本論文の原題は「Fluvoxamine drastically increases concentrations and effects of tizanidine: A potentially hazardous interaction」。アブストラクトは、こちらで閲覧できる。
(田島健、日経ドラッグインフォメーション

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