2004.06.14

米国の癌臨床試験は若年・白人・男性が優先、癌患者の大部分占める高齢者は“想定外”

 米国では30〜64歳の白人男性を必要以上に優先して癌治療法の開発が進められているようだ。高齢者は癌患者の3分の2を占めるのに臨床試験の登録比率では3分の1に過ぎない。ヒスパニックと黒人の登録率は白人よりも3割近く少なく、年を追って格差が拡大している。米Yale大学医学部のVivek Murthy氏らの研究で、論文は米医師会誌Journal of American Medical Association(JAMA)2004年6月9日号に掲載された。

 Murthy氏らの研究グループは、米国立衛生研究所(NIH)の下部機関である癌研究所(NCI)が主導する臨床試験のうち、1996〜2002年に実施された乳癌、大腸癌、肺癌、前立腺癌に関する非外科的治療に関する臨床試験に参加した7万5215人について年齢、性、人種を調べ、癌発症者における構成比と比較した。

 その結果、癌発症者のうち30〜64歳の若年者は37.5%、65〜74歳と75歳以上の高齢者はそれぞれ31.4%、31.2%で、高齢者が6割以上を占めていたが、臨床試験の登録者では、逆に30〜64歳の若年者が68%と3分の2以上を占め、65〜74歳の高齢者は23.7%、75歳以上はわずか8.3%に過ぎず、若年者に対して有意に少なかった。

 人種比率で見ると、ヒスパニックは癌発症者の3.8%を占めるのに臨床試験の登録者では3.1%、黒人は眼発症者の10.9%を占めるのに臨床試験登録者は9.2%と少なく、オッズ比でみた場合、ヒスパニックと黒人の臨床試験登録は白人のそれぞれ72%、71%と有意に3割近く少なかった。しかも、全登録者に占めるヒスパニックと黒人の比率は、1996年にはそれぞれ3.7%、11%だったが、年を追って減少し、2002年にはそれぞれ3.0%、7.9%に減っている。

 4種類の癌種のうち、肺癌と大腸癌について男女比をみると、発症者のうち臨床試験に参加した者の比率は、大腸癌では男性が女性の1.30倍、肺癌では1.23倍でいずれも有意に多かった。ただし、4種類の癌のうち、発症者に占める臨床試験参加者の比率は、乳癌が3.2%と平均の1.7%を大きく上回っていた。前立腺癌ではこの値は0.8%に過ぎなかった。

 米国では、米国立衛生研究所(NIH)が主導する臨床試験に女性や少数人種の積極的な登録を義務付ける法律が1993年に制定されているが、改善が進んだとは言えないようだ。しかも、単純に人種、性、年齢などの構成比を地域人口構成比に合わせただけではサブグループの統計的分析に必要なサンプル数が確保できない。このため、Murthy氏らは、「特定の人種に多発する癌種や癌治療に影響する併存疾患を持つ高齢者など、サブグループの特性に対応した臨床試験を設定することも必要な場合があるに対しては、専用の臨床試験を組むべきだ」としている。

 本論文の原題は、「Participation in Cancer Clinical Trials Race-、Sex-、and Age-Based Disparities」。アブストラクトはこちらまで。(中沢真也)

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