2004.06.14

【ASCO2004ダイレクト】 腋窩リンパ節郭清は60歳以上の乳癌患者の延命に寄与せず合併症・後遺症が増加

 臨床的にリンパ節転移が確認されない、60歳以上の手術可能な乳癌女性を対象に、腋窩リンパ節郭清を追加する意義があるか否かについて検討した国際的なランダム化比較試験(International Breast Cancer Study Group Trial 10-93)の結果が、一般口演「Breast CancerII」で明らかにされた。対象患者において、腋窩リンパ節郭清の追加が無再発生存率や総生存率を向上させるというエビデンスは見いだされず、却って合併症・後遺症が増加してQOLを低下させることが確かめられた。

 この試験では、1993年から2002年の間に、臨床的にリンパ節転移がない手術可能な乳癌と診断された60歳以上の女性473例(平均74歳)が登録された。乳癌の外科的切除に腋窩リンパ節郭清を加え、その後タモキシフェンを投与する群と、外科的切除だけを行いその後タモキシフェンを投与する群にランダムに分け、QOL(LASA[Linearanalogue self-assessmentscales]で評価)や無再発生存率、総生存率などが検討された。対象患者のうち、80%がER陽性で、ま45%が乳房切除術、33%が放射線照射を加えた乳房温存術、22%が放射線照射なしの乳房温存術が施行された(追跡期間中央値6年)。

 その結果、腋窩リンパ節郭清を行った群のQOLは、郭清を行わなかった群に比べ有意に低下していた。腕の可動制限や腕の痛みなどの合併症・後遺症の頻度も郭清を行った群で有意に高かった。また、無再発生存曲線や総生存曲線はほとんど重なり合う形で推移し、リンパ節再発率(1%対3%)や5年無再発生存率(71%対70%、相対リスク1.12、95%CI;0.82-1.53、p=0.46)、5年総生存率(78%対80%、相対リスク1.10、95%CI;0.77-1.55、p=0.61)はほぼ同等だった。

 この結果を発表した米国Dana-Farber癌研究所のS.Holmberg氏は、「臨床的にリンパ節転移が確認されない、手術可能な高齢の乳癌女性に対して、腋窩リンパ節郭清を避け術後タモキシフェンで治療することは、QOLの改善につながり、明らかに無再発生存率、総生存率、リンパ節再発の危険を高めることもないといえる」と語った。日本ではいまだに、臨床的にリンパ節転移が確認されない乳癌患者に対して、乳房切除の場合も、乳房温存療法の場合も、腋窩リンパ節郭清を行う施設が少なくない。この国際共同研究の結果は、今後の日本の乳癌治療の現場にも影響を与えそうだ。(大滝隆行、日経メディカル

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