2004.06.11

タモキシフェン服用に伴うほてりを和らげるSSRIがタモキシフェンの効果を減弱

 乳癌術後のエストロゲン受容体拮抗薬タモキシフェンの服用に伴うほてりを和らげるためによく処方されるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が、ある薬物代謝酵素の遺伝子多型を持つ女性においては、タモキシフェンの
乳癌再発予防効果を弱めてしまう可能性があることが明らかになった。米国 Johns Hopkins Kimmel癌センターのV.Stearns氏が、一般口演「Breast Cancer II」の中で報告した。

 タモキシフェンは薬物代謝酵素シトクロームP450(CYP)によって、エンドキシフェン、N-desmethyl-タモキシフェン(NDM)、4-hydroxy-タモキシフェン(4-OH)などの活性代謝産物に変換されるが、CYP遺伝子の多型を持つ人の頻度は高く、タモキシフェンの効果の個人差はその変異型に依存している可能性がある。また、Stearn氏らのこれまでの報告から、CYP2D6阻害作用のあるSSRIを併用するとエンドキシフェンの血中レベルが大きく低下することが分かっている。

 そこで、Stearns氏らは、乳癌治療のためタモキシフェンを毎日服用している80人の女性を対象に、CYP2D6遺伝子多型とタモキシフェン、それぞれの活性代謝産物の血中レベルとの関係を調べた。その結果、エンドキシフェンのレベルがCYP2D6遺伝子多型と関係し、CYP2D遺伝子に変異のない野生型を持つ女性(51例)のエンドキシフェンレベルは、変異を一つ持つヘテロ型の女性(23例)や変異を2つ持つホモ型の女性(3例)に比べ有意に高かった(p<0.0001)。

 ところが、CYP2D遺伝子野生型とヘテロ型を持つ女性では、CYP2D6阻害作用のあるSSRI(パロキセチン、サートライン)を服用していると、エンドキシフェンレベルが服用しない場合に比べ有意に低下した(それぞれp=0.0001、p=0.07)。一方、CYP2D6阻害作用のないSSRI(ベンラファキシン)を服用している女性はそうした傾向が見られず、タモキシフェン服用者のエンドキシフェンのレベルは、CYP2D阻害作用のあるSSRIの影響を強く受けることが分かった。

 この結果から、Stearns氏は、「乳癌治療で長年タモキシフェンを服用している女性では、薬効に影響する重要な因子として薬理遺伝学的因子と薬物相互作用が考慮されるべきだが、現在タモキシフェンで治療中の女性に対して、エンドキシフェンのレベルに影響を与えないSSRIを勧めるか否かについてはさらに明確なエビデンスを待たなければならない」と述べた。
(大滝隆行、日経メディカル

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