2004.06.10

標準化学療法とエルロチニブの併用は未治療非小細胞肺癌患者の延命に寄与せず

 標準的化学療法が無効な進行非小細胞肺癌患者に対する延命効果が確認された新規EGFR(ヒト上皮成長因子受容体1)阻害薬エルロチニブ(OSI-774)。未治療の進行非小細胞肺癌患者を対象に、標準的化学療法にエルロチニブを併用して生存期間が延長するか否かについて検討した2つの第3相試験(TALENT、TRIBUTE)の結果も、一般口演「肺癌II」の中で報告された。しかし、2つの試験ともに、進行非小細胞肺癌患者の初回治療において、現在の標準的治療にエルロチニブを加える意義は見いだ出されなかった。

 TALENTと呼ばれる第3相試験では、過去に治療歴の無い切除不能な進行非小細胞肺癌患者1172例を、ゲムシタビンとシスプラチンによる6サイクルの化学療法にプラセボを加えた群と、同様の化学療法にエルロチニブ150mg/日を加えた群にランダムに分け、生存期間や腫瘍の無増悪期間が検討された。その結果、両群の生存曲線はほとんど重なり合う形で推移し、生存期間や腫瘍の無増悪期間はほぼ同等だった。

 一方、TRIBUTEという試験は、過去に治療歴の無い切除不能な進行非小細胞肺癌患者1059例を対象に、パクリタキセルとカルボプラチンによる6サイクルの化学療法にプラセボを加え、化学療法終了後プラセポ投与を継続する群と、同様の化学療法にエルロチニブ150mg/日を加え、化学療法終了後エルロチニブ単独投与を継続する群にランダムに分け、生存期間や腫瘍増殖までの期間を検討したもの。この試験でも、生存期間や腫瘍増殖までの期間に関して、両群に有意差は認められなかった。

 標準治療が無効な進行非小細胞肺癌患者に対する第2次、第3次治療としての効果が認められたエルロチニブたが、未治療の進行非小細胞肺癌患者に対する標準治療への上乗せ効果は一転、否定される結果となった。同様の経口のEG
FRチロシンキナーゼ阻害薬ゲフィチニブ(イレッサ)に関しても、これらの試験とほぼ同じ対象と方法で行われた第3相試験(INTACT-1、2)で標準治療への上乗せ効果が認められなかった。

 同セッションで、エルロチニブに関する一連の第3相試験のレビューを行ったコロラド大学ヘルスサイエンスセンター(米国)のF.Hirsch氏は、これらの試験が延命効果をもたらさなかった原因として、1.エルロチニブのようなチロシンキナーゼ阻害薬が効く患者が限定されるためその選択の欠如、2.薬剤とある宿主側因子の相乗作用との拮抗、3.逐次投与か同時併用かなど薬剤の投与方法やタイミングの不適切さ、4.チロシンキナーゼ阻害薬の薬効に対する併用抗癌剤の悪影響−−などの点を挙げた。「臨床的な特徴や病理組織学的特徴に加え、薬効を規定する癌細胞の遺伝子プロファイルなどのバイオマーカーを開発することにより、エルロチニブのような薬が最も効く患者を選び出す手段やステップを追求していく必要があるだろう」と同氏は指摘した。
(大滝隆行、日経メディカル

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