2004.06.10

化学療法の遅延性嘔吐、抑制できないと1.6から3.5倍のコスト増に

 抗癌剤投与によって起こる化学療法誘発性吐気・嘔吐(CINV:chemotherapy induced nausea and vomiting)は、化学療法を受ける患者にとって最も大きな苦痛であるだけでなく、医療経済的にも損失が大きいことがイタリアにおける前向き観察研究で分かった。制吐薬の投与などに吐気・嘔吐を抑制できた場合に比べ、抑制できなかった場合には、入院費用や看護費用などや患者・家族の収入減などを含め、1.6から3.5倍のコスト増になるという。6月6日の総合ポスターセッションの「医療サービス研究」で米Merck社のRobert Deuson氏が発表した。

 研究はイタリアの7カ所の癌センターで実施された。2002年12月から2003年9月にかけ、シスプラチンを含むレジメンの化学療法を受けた患者を登録し、169人について調査結果を得た。患者は非小細胞肺癌が42%で最も多く、次いで胃癌が7.7%、63.9%が転移性だった。投薬レジメンはシスプラチン+ゲムシタビンが49.7%と半数を占め、次いでシスプラチン+5-FUが17.8%が多かった。治療の過程で、患者169人のうち、3分の1を超える62人(36.7%)1回以上の嘔吐を体験し、102人(60.4%)が軽い吐き気以上のCINVを体験していた。

 Deuson氏らは、CINVの予防と治療に要する費用として、5-HT3アンタゴニスト、ステロイド、抗ドーパミン薬、入院費、通院費、介助費などの直接コストと親族による介護コストや収入減などの間接コストを計算し、CINVの完全な抑制(吐気・嘔吐なし)に成功した場合としなかった場合で、コストを比較した。

 その結果、急性期における病院への支払い額は、CINVが抑制できた場合には15.12ユーロ(1ユーロ=132円として1996円、以下同)だったのに対して、抑制できなかった場合は22.06ユーロ(2912円)と46%多かった。遅延性CINVの場合は、さらにこの差が開き、抑制できた場合の病院支払いコストは5ユーロ(660円)だったのに対し、非抑制では17.55ユーロ(2317円)と約3.5倍に跳ね上がった。

 病院費用、保険支払いコスト、間接コストなどをすべて含めた総合コストで比較すると、CINVを抑制できなかった場合のコストは抑制できた場合のコストに比べて36ユーロ(4752円)、およそ86%上回った。

 上記のコストに反映されないQOLの損失も大きい。調査の中で、CINVが日常生活に影響しない、またはごく軽度と回答したのは、吐き気では92人中22人、嘔吐では52人中17人に過ぎず、3分の2から4分の3の患者は、CINVによって日常生活に中程度以上の影響を受けていることが判明した。(中沢真也)

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