2004.06.08

会長講演:ASCO発展に向けた新戦略を表明、教育プログラム拡充と政治への働きかけを強化

 6月5日午前の開会セッションで行われた会長講演で今期会長のMargaret Tempero氏は、ASCOの発展を目指した新戦略を表明、臨床試験における保険給付の確保に向けた政治的働き掛けの強化や海外向け教育プログラムの拡充など、米国内外におけるASCOの地位強化を強く打ち出した。

 Tempero氏が「最高の優先課題として取り組む」と強調したのは、臨床試験に関する健康保険の適用について、連邦政府に対する政治的圧力を高めていくことだ。米国では低所得者層などに適用される健康保険のMedicareについて、2003年にMedicare近代化法(MMA:Medicare modernization act)が成立し、今後、臨床試験に対する支給における制限が強化される方向だ。「臨床試験は癌治療の一部になっており、臨床試験の実施に対する脅威になる」(同氏)として、議会に対する働きかけをさらに強めていく構えだ。

 米国外に対しては、教育活動や留学支援を通じて国際的なイニシアティブの強化を図る。現在では、ASCOの会員2万1000人の27%は米国外の会員で占められる。事実上、ASCOの年次集会は臨床腫瘍学の世界大会であり、今後、国外との連携を強化しつつ、現在の主導的地位をさらに強化していくという。具体的には、中国などに対する癌管理の訓練コース開発、ASCOが出版している論文誌Journal of Clinical Oncologyのスペイン語版、ポーランド語版の発行、日本語版の教育書籍の発行を計画している。また、外国人研究者を米国内の癌研究機関に招く招待枠の拡大も決めた。

 米国内でも学術集会の開催など教育プログラムの充実を図る。「ASCO年次集会は医家教育のゴールドスタンダードであり、近年、教育プログラムのさらなる強化を図ってきた」(Tempero氏)という。今年に入って放射線腫瘍治療学会など複数の学会と共同で初の消化器癌シンポジウムを開催したほか、特定疾患対象のシンポジウムや雑誌の発刊を進める。

 このほか、患者や投資家も加えた医学研究の強化や、癌の予防医療の本格的普及に備えた教育プログラム作成にも着手し、癌治療の変貌に先手を打っていく狙いだ。強力なリーダーシップで新戦略の提示、明確なゴールの設定、チームワークの強調などを主張するTempero氏は、日本人の目には学会長というよりも超一流企業の女性CEOのような印象だった。(中沢真也)



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