2004.06.08

ハーセプチン含む乳癌術前化学療法、約7割の患者で癌が病理組織学的消失

 局所進行乳癌患者に対し、分子標的薬トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)を併用した術前化学療法(ネオアジュバントテラピー)を行うと、65%と極めて高い腫瘍の病理組織学的消失(pCR)率が得られることが、M.D.Anderson癌センター(米国)のA.Buzdar氏らのランダム化比較試験(RCT)で明らかになった。6月6日のORALPRESENTATION「Breast CancerI」で発表された。これまでのレジメンでは、5〜30%のpCR率しか得られていなかった。会場の質問者からは「excellent study」との賞賛の声が相次いだ。

 Buzdar氏らは、HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)陽性の手術可能な局所進行乳癌患者42人を、パクリタキセルを4サイクル投与後にFEC療法(5-FU、エピルビシン、シクロホスファミド)を4サイクル行う群(19例)と、同様のパクリタキセルとFEC療法にトラスツズマブ(週1回)を加えた化学療法を計24週間行う群(23例)にランダムに分け、術後のpCRを観察した。

 その結果、トラスツズマブを併用した群のpCR率は65%と、トラスツズマブを併用しなかった群の25%に比べ有意に優れていた(p=0.02)。有害事象に関しては、神経障害がトラスツズマブ併用群で有意に多く発生したが、アントラサイクリン系薬とトラスツズマブの併用で懸念される心毒性に関しては、左室駆出率の10%以上の低下が併用群7例、非併用群5例に起こったが、心不全の発生は認められなかった。

 「今後さらにフォローして延命効果を見る必要があるが、今回のわれわれの研究で、有害事象の発生が低くかつ高いpCR率を得られたのは、パクリタキセルにアントラサイクリン系薬を逐次的に投与した上にトラスツズマブを加える方法を行ったためではないか」とBuzdar氏は語った。

 術前化学療法により高い乳房温存率が得られる上、術前化学療法を施行した乳癌患者の長期予後を見た大規模臨床試験(NSABPB-18)の結果から、pCRとなった患者だけが延命効果を得られることが明らかになっている。だが、これまでの様々なレジメンを用いた試験によれば、5〜30%のpCR率がせいぜい。今回のM.D.Anderson癌センターの試みは、HER2陽性の患者に限られるとはいえ、これまでの乳癌術前化学療法の予後改善効果の限界を大きく超える可能性を秘めている。
(大滝隆行、日経メディカル

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