2004.05.21

【連載:がんの治療成績を読む】その23 全がん協施設の「施設別・病期別5年生存率」  肺がん4期、胃がん2、3、4期など顕著な格差 来年からは施設名を開示して公表へ

 がん治療の5年生存率における大きな施設間格差を改めて証明するデータを入手した。

 <連載8>では、全国がん(成人病)センター協議会(以下、全がん協)加盟の施設の中で、病院のタイプによって大きな5年生存率格差があることを指摘した。また、<連載10>では、同じく全がん協の29施設を対象に、23個別施設の5年生存率に大きなばらつきがあることを明らかにした。

 ただし、連載8、10で使用したデータは、多くの種類のがんの症例を合わせて集計したもので、病期別の分類もなされていなかった。これらのデータは施設ごとの生存率格差を強く示唆するものの、その詳しい実態は明らかではなかった。

 今回、肺がん、胃がん、乳がんについて、施設別・病期別の5年生存率データを入手した。厚生労働省研究班(班長:神奈川県立がんセンター研究第3科長、岡本直幸氏)が、本誌の要請もあって分析を行ったもの。全がん協加盟29施設のうち21施設から提出された1996年初発がん患者に関するデータに基づいて分析し、肺がん、胃がん、乳がんの年間症例100例以上の施設については施設別・病期別の5年生存率を算定した。ただし、今回は施設名は匿名となっている。  

 <表1>は、肺がんの5年生存率だ。



 中でも4期の差が注目される。施設1(施設整理の番号や記号は本誌による)は33症例で45.5%、施設5は28症例で34.2%の成績を得ている。一方、施設11は41症例で0%、施設7は31症例で0%となっている。33例のうち15例が生存する施設と41例のうち生存数がゼロの施設と、成績がくっきりと分かれている。

 3期についても差が大きい。31症例で5年生存率32.3%(10例生存)のところもあれば、39例で5.3%(2例生存)や55例で7.3%(4例生存)といった生存率しか挙げられていないところもある。

 2期でも施設6と施設12を比べると、症例数はほぼ同じなのに、生存率は3倍の差がある。さらには1期においても生存率が8割を超える施設がある一方で、5割以下の施設も存在する。

 全がん協加盟施設および肺がんに関連した学会は、こうした成績格差の原因究明と格差解消策を急ぎ実施することが求められるだろう。  

 <表2>は、胃がんの5年生存率だ。ここでも大きな成績差が存在する。  



 まず4期。施設Mは症例18で33.3%、施設Gは症例21で31.8%と比較的良好。その一方で、施設Nは症例30で生存数はゼロだ。

 次に3期。症例27で77.8%を出している施設もあれば、症例25で32.0%のところもある。

 2期でも、11例で100%の施設から15例で26.7%の施設まで、ばらつきが見られる。  

 <表3>の乳がんの5年生存率では、肺がんや胃がんにおける格差と比べると開きは少ない傾向があるものの、やはり、かなりの生存率の違いが観察される。4期では施設キが10例で79.1%の生存率であるのに対し、施設ウは13例で15.4%にとどまる。



 <表4>から<表6>は、全がん協加盟施設を「がんセンター群」(がん治療を専門とする施設)、「総合病院併設型がんセンター群」、「成人病センター群」(虚血性心疾患、生活習慣病なども治療する施設)、「総合病院併設型成人病センター群」、「総合病院群」(幅広い疾患を診察する施設)の五つにタイプ分けして、肺がん、胃がん、乳がんの成績を見たものだ。







 施設群別にも差が確認される。 

 このほど、これらのデータをまとめた岡本氏は、「疾病と病期を区分して比較しても、施設別格差が存在することが確認できた。今後、こうした比較をさらに進めていくことが、がんの治療成績全体を高めていくために重要だ」と語る。また、「今回は、個別施設名は公表できなかったが、今後は施設名を明らかにする方向で検討するべきだ」と、来年の集計時には施設名の開示が行われる可能性が高いことを示唆した。

 全がん協に加盟する29施設は、日本のがん治療の中核となる施設。ところが、これらの施設の中でも大きな成績格差が歴然と存在しているわけだ。今後、全がん協施設が、主要ながんの生存率を病期別に開示するようになることは、がん診療の質と成績の均てん化のため、大きな一歩となる可能性がある。

*注:データは1996年の初診入院がん患者。消息判明率95%。ステージ0、上皮内がん除く。15歳未満、96歳以上除く。
 全がん協加盟29施設のうち表4、5、6はそのうち分析可能なデータを提出した下記施設を対象に集計。表1、2、3は、年間症例100以上の施設だけを対象とした。

**集計施設名 宮城県立がんセンター、栃木県立がんセンター、茨城県立がんセンター、群馬県立がんセンター、埼玉県立がんセンター、千葉県がんセンター、神奈川県立がんセンター、新潟県立がんセンター、癌研究会病院、東京都立駒込病院、岩手県立中央病院、山口県立中央病院、山形県立成人病センター(現、がん・生活習慣病センター)、福井県立成人病センター、大阪府立成人病センター、兵庫県立成人病センター、国立札幌病院、国立四国がんセンター、国立九州がんセンター                        
(埴岡健一、日経メディカル

*随時、掲載します。

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