2004.04.30

ビタミンDは“転ばぬ先の杖” お年寄りの転倒を防ぐ−−意外な効果が明らかに

 お年寄りが寝たきりになってしまう一番の原因は、骨折。うっかり転んで足の骨を折り、そのまま寝ついてしまうことが多い。この「転倒」を、ビタミンDで防げるという研究報告が相次いでいる。

 米国Harvard大学のHeike A. Bischoff-Ferran氏らは、ビタミンDの転倒予防効果を調べた研究論文を、もれがないように調査。お年寄りがビタミンDを1日800IUとると、転倒を3割以上減らせるとの調査結果をまとめ、米国医師会が発行する学術誌『JAMA』(Journal of the American Medical Association)の4月28日号で発表した。

 ビタミンDは、骨や歯の健康を保つために必要なビタミン。小腸でカルシウムやリンが吸収されるのを助け、血液中のカルシウム濃度を一定に保つ役割を果たしている。

 大勢の人に調査をかけて栄養状態と病気との関係などを調べる「疫学調査」では、血液中のビタミンD濃度が高い人で骨折が少ないことがわかっている。しかし、サプリメントなどでビタミンDをとってもらい、骨折が減るかどうかを調べる「介入研究」では、はっきりした効果が確かめられていない。

 そのため、「ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるだけで、骨を直接強くするわけではない。だから、ビタミンDだけでは骨折は防げない」というのが、医学界の定説になっていた。

 ところが、90年代になって、これまで「必要量」とされてきた量(200IU)よりずっと多いビタミンDを使った介入試験で、骨折が確かに減ることがわかった。データをよく調べてみると、骨の強さ(骨密度)はあまり変わっていないのに、骨を折る人が減っている。中でも、腕や足など「転んだ時に折れやすい場所」の骨折が、大幅に少なくなっていた。

 この研究は、世界中の研究者たちに大きな影響を与えた。血中のビタミンD濃度が高い人で骨折が少ないのは、骨が強いからではなくて、転びにくいからではないか−−。

 そう考えた研究者たちが、「転びやすさ」に焦点を当てたビタミンD研究を世界中で行った。そして、「ビタミンDをとると転びにくくなる」という研究結果が、続々と報告されるようになったのだ(関連トピックス参照)。

 今回の調査でわかったことは二つ。

 一つは、お年寄りがビタミンDをとると、確かに転びにくくなるということ。研究方法などが特に厳密な5研究を総合すると、食品に含まれているのと同じ「ビタミンD3」(コレカルシフェロール)や、医薬品で使われる「活性型ビタミンD」には、転倒を22%防ぐ効果があるという計算になった。

 もう一つ、今回の調査で明らかになったことがある。ビタミンDの「量」が、転倒予防効果と関係しているかもしれないということだ。

 ビタミンD3を1日400IUとってもらった介入試験では、転倒を防ぐ効果が小さく、結果がはっきりしないものも多かった。一方、ビタミンD3を1日800IUとってもらった介入試験を総合すると、転倒を35%防ぐ計算になった。ちなみに活性型ビタミンDは、転倒を29%防いだ。

 私たちの体内のビタミンDには、食品からとるものと、日光が皮膚に当たって合成されるものとがあるが、体内で働くためには、どちらも腎臓や肝臓で活性型に変換されなければならない。

 お年寄りは若者より腎臓や肝臓の機能が下がっていることが多いので、活性型への変換効率が低く、1日800IUとらないと効果が出なかった可能がある。

 ビタミンDを多く含む食品は、サケやマグロ、ウナギ、イワシなどの魚やキクラゲ、シイタケなどのキノコ類。1日800IUとるためには、魚なら1〜2切れ、シイタケは10枚、キクラゲは乾燥品で一つかみ(5g)が目安だ。
 
 こうした食品に、サプリメントや医師に処方してもらえる薬(活性型ビタミンD)をうまく組み合わせて、ビタミンDをしっかり取るといいのだろう。

 この論文のタイトルは、「Effect of Vitamin D on Falls」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.10.14 日本骨粗鬆症学会速報】ビタミンDが高齢者の転倒を4割減少、Ca製剤の併用で転倒による骨折も予防−−特別講演より

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