2004.04.23

味の素、アミノ酸研究を呼びかける 総額10億円超を「研究助成」と「寄付講座」に投入へ 

 味の素は、アミノ酸の健康効果解明に向けて、研究体制を一段と加速させることを明らかにした。アミノ酸事業で世界をリードする同社は、2005年から国内外の研究者を対象にした「研究助成」と、国内の大学への「寄付講座」の2本柱で、アミノ酸研究体制の拡充を図る。

 研究助成として同社は、「Ajinomoto Amino Acid Research Program」(略称:3ARP)と呼ぶ研究プログラムを用意。国内外の研究者を対象に、4月1日から研究テーマの公募を開始した。

 「5年で総額10億円の大型リサーチプログラムを本年度から立ち上げ、推進していく」と、4月20日に東京都内で開かれた「味の素R&D懇談会」で、同社代表取締役専務執行役員の西山徹氏は力強く語った。

 公募する研究テーマは2タイプ。

 アミノ酸の新しい生理・薬理活性の解析などの「探索研究」に、年間最大5万ドルを最長2年間助成する。
 
もう一つは、ヒトでの実証試験などより高度な研究内容を含むテーマで、年間最大20万ドルを最長3年間助成する。

 研究者からの反応は上々なようだ。

 「『Nature』誌や『Science』誌などの一流学術誌で告知したところ、海外を含め、既に300件を超すアプローチが来ている」と西山氏。

 同社は今年11月までに採択テーマを決定、2005年4月から助成を開始する。

 もう一つの柱である寄附講座は、「国内の大学を対象に二つの寄付講座を設け、機能性食品ゲノミクスと健康科学をテーマとした研究を支援する」(西山氏)もの。

 うち、一つは既に動き出している。2003年12月1日に、東京大学大学院農学生命科学研究科に設置された「食品機能解析ゲノミクスセンター」がそれだ。遺伝子チップなどを使い、食品を摂取したときの遺伝子発現量の変化を調べて、食品の持つ未知の機能性を探る。

 同センターには、特定非営利活動法人(NPO)の日本国際生命科学協会(ILSI Japan)に所属する食品企業26社が、共同で年間に4500万円を寄付する。

 設置期間は2008年11月31日までの5年間の予定で、東京大学大学院農学生命科学研究科の阿部啓子教授の研究室が寄付講座の受け皿となっている。

 この寄付講座は他の食品企業との共同設置だが、もう一つの「健康科学関連の寄付講座」は、味の素1社による設置の模様。ただし、設置時期や受け皿大学などの詳細は、現時点では一切公表されていない。

 味の素はなぜここに来て、大掛かりな研究投資に踏み切ったのか。

 背景には、アミノ酸市場の急成長と、健康機能を示すエビデンス(科学的根拠)との間に、ギャップがあるためのようだ。

 アミノ酸を含有する機能性食品の市場は急拡大している。
 
 2003年に1600億円と、2002年に比べて1.7倍の規模に拡大した(味の素の推定)。手軽に飲めるアミノ酸飲料が増え、テレビコマーシャルなどで「アミノ酸がダイエットに効く」というイメージが消費者に広がったことで、市場が拡大している。

 しかし、ダイエットなどアミノ酸の健康機能に関して、根拠となるエビデンスは分岐鎖アミノ酸(BCAA)などの医薬品について臨床評価で得られたものを除けば、ほとんどないのが実情だ。

 現在のアミノ酸市場は、話題先行型といえる。

 急拡大したアミノ酸市場を“バブル”に終わらせないために、健康機能を裏付けるエビデンスの構築が急務だ。

 同社の研究体制強化策は、アミノ酸食品を市場に根付かせるための新たな試みとして、注目される。(河田孝雄)

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