2004.04.14

“ポスト・スタチン”の最右翼はCETP阻害薬か HDLコレステロール値が2倍に−−米研究

 高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値を上昇させる、新しい脂質改善薬の臨床試験結果が、New England Journal of Medicine(NEJM)誌4月8日号に掲載された。わずか19人を対象とした短期間のパイロット試験だが、8週間の服用でHDLコレステロール値が2倍になるなど、期待の持てる結果になった。

 低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値が高いと、心疾患にかかるリスクが高いことはよく知られている。このLDLコレステロール値を効率良く下げるのが、LDL合成に関わる酵素の一つ、HMG-CoA還元酵素を阻害するスタチン系薬だ。

 一方、HDLコレステロール値が低い人でも、心疾患の発症リスクがやはり高くなる。しかし、これまではHDLコレステロール値を効率良く引き上げる薬がなかった。一般にはフィブラート系薬やナイアシン(ニコチン酸)が低HDLコレステロール血症の治療に使われるが、HDLコレステロール値の上昇率はたかだか25%程度に留まっている。

 今回の臨床試験に使われたのは、脂質代謝で大きな役割を果たしている、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)の阻害薬。CETPには、HDLからコレステロールエステルを引き抜き、LDLや超低比重リポ蛋白(VLDL)に転送する(中性脂肪と交換する)作用がある。CETPを阻害すると、HDLコレステロールが増え、LDLコレステロールが減ることが期待できる。

 臨床試験の対象は、HDLコレステロール値が低く(40mg/dl以下)、中性脂肪値が極端には高くない(400mg/dl以下)、19人の男女(男性17人、女性2人)。全員にCETP阻害薬のトルセトラピブを1日1回120mg、4週間服用してもらい、うちLDLコレステロール値が160mg/dl以上の9人には、スタチン(アトルバスタチン、わが国での商品名:リピトール)を併用してもらった。

 さらに、トルセトラピブだけを服用した10人中6人には、4週間の試験終了後、さらに4週間、トルセトラピブを倍量(120mgを1日2回)飲んでもらった。

 すると、4週間後のHDLコレステロール値は、トルセトラピブだけを飲んだ群では61%、トルセトラピブとアトルバスタチンを併用した群では46%、それぞれ有意に高くなった。トルセトラピブをさらに4週間、倍量飲んだ6人では、8週間後のHDLコレステロール値が当初よりも106%上昇していた。

 一方のLDLコレステロール値は、単剤4週群が8%、スタチン併用4週群が17%、単剤8週群が17%、それぞれ低下していた。

 面白いのは、LDLコレステロールやHDLコレステロールの「サブクラス分布」に変化がみられることだ。作用機序からは当然ともいえるが、HDLコレステロールについては、粒子径が大きいHDL(HDL2)の比率が増えていた。同様にLDLコレステロールでも、粒子径が小さく、比重が高いLDL(small,denseLDL)が減り、粒子径の大きなLDLが増えていた。

 研究を行った米国Tufts大学脂質研究所のMargaret E. Brousseau氏らは、「心疾患患者では粒子径の大きいHDLコレステロールが少なく、粒子径が小さいLDLコレステロールが多い」との研究結果を紹介。CETPを阻害することで、HDL、LDLともに平均粒子径が大きくなるとの今回の結果は、サブクラス分布面からも心疾患予防にプラスに働くと印象付けている。

 ただし、CETPを完全に欠損した人(日本人では約1000人に一人と、他の人種より多い)の場合、HDLコレステロール値が高く、HDLの粒子径も大きいが、心疾患リスクはむしろ高いとの報告もある。つまり、HDL2が増えることが、本当に心疾患予防の方向に働くか否かはまだわからない。

 次の課題は、CETP阻害薬によるHDLコレステロール値の増加が、心疾患の予防に結び付くことを、長期間の大規模試験で示すこと。副作用がスタチン並みに少なく、患者の服薬継続率(コンプライアンス)が高いことも必須条件だ。それが実証できれば、CETP阻害薬は次世代の脂質改善薬として、臨床現場に普及することになるだろう。

 この論文のタイトルは、「Effects of an Inhibitor of Cholesteryl Ester Transfer Protein on HDL Cholesterol」。アブストラクトは、こちらまで。
(内山郁子)

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