2004.04.08

ビタミンCとE、「効く人」と「効かない人」がいる ハプトグロビン遺伝子が関与か−−米と加の共同「WAVE」研究より

 消費者に人気が高いビタミンCとビタミンEの抗酸化サプリメントは、本当に動脈硬化予防に効くのかどうか。

 最新の『Diabetes Care』誌2004年4月号に掲載された研究論文で、これら抗酸化ビタミンには「効く人」と「効かない人」がいて、「効く人」には動脈硬化を予防する効果が確かにあるが、「効かない人」には予防効果がないか、悪化させることもある−−ということが、米国とカナダの共同研究チームから報告された。

 動脈硬化が進むと、血管が細く、硬くなり、固まった血液が詰まりやすくなって心臓発作や脳卒中を起こすリスクが高くなる。

 動脈硬化を悪化させるのが活性酸素などによる酸化ストレス。悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が酸化され、それが動脈の壁にもぐりこんで血管を細くし、血液を固まりやすくする、というのが動脈硬化の進行パターンだ。

 これまでの動物実験で、抗酸化力の強いビタミンCとEはLDLコレステロールの酸化を抑え、動脈硬化が進みにくくなることが確かめられている。

 ところが、ヒトを対象とした臨床試験では、「効く」とする研究と、「効かない」あるいは「逆効果」とする研究に分かれていた。(関連トピックス参照)。

 今回判明したのは、ビタミンCとEには効く人と効かない人がいて、体内で赤血球のリサイクルを行っている「ハプトグロビン」というたんぱく質の遺伝子タイプがそれを決めるということ。

 ハプトグロビン遺伝子には1型と2型がある。私達は父親と母親から一つずつ、遺伝子を受け継いでいるので、組み合わせは1型が二つ(1/1型)、2型が二つ(2/2型)と、1型と2型を両方持つ1/2型の3通りになる。

 報告では、1/1型の人(1型のハプトグロビン遺伝子をペアで持っている人)は、抗酸化ビタミンの摂取で動脈硬化の進行を予防できた。

 一方、1/2型(1型と2型のハプトグロビン遺伝子をもつ)と2/2型(2型のハプトグロビン遺伝子をペアで持っている人)では、動脈硬化の予防効果がまったくなかった。

 さらに、2/2型でかつ糖尿病にかかっている人では、抗酸化ビタミンをのむと動脈硬化の進行がかえって早まった。

 この研究のベースになったのは、抗酸化ビタミンの効果を調べた臨床試験の一つ、「WAVE」(Women's Angiographic Vitamin and Estrogen)。同試験では当初、抗酸化ビタミンは動脈硬化進行の予防効果がないという結果を出していた。

 しかし、最近になって「ハプトグロビンの遺伝子タイプによって、抗酸化ビタミンをのんだ時のLDLコレステロールの酸化されやすさが変わる」という報告があった。

 そこで、「WAVE」試験の研究グループは、ハプトグロビンの遺伝子タイプ別にデータを見直すことにした。

 「WAVE」試験は、動脈硬化のため心臓の動脈(冠動脈)が部分的に細くなった、約400人の閉経後の女性を対象としたプラセボ対照試験。

 くじ引きで2グループに分け、抗酸化ビタミン(ビタミンCとE)またはプラセボを5年間のんでもらい、冠動脈の太さ(動脈硬化の進行度)がどう変わったかを調べた。

 研究グループは、ハプトグロビンの遺伝子型がわかった299人について、年齢や血清コレステロール値、糖尿病にかかっているかどうかなど、動脈硬化の進行に影響するかもしれない因子でデータを補正。その上で、遺伝子タイプにより抗酸化ビタミンの効果が変わるかどうかを検証した。

 その結果、抗酸化ビタミンの動脈硬化予防効果は、1型遺伝子をペアで持つ人にしか現れないことがわかったわけだが、実は、ハプトグロビン遺伝子に1型と2型があるのは人間だけ。

 動物のハプトグロビン遺伝子には1型しかなく、「動物実験では必ず『効果あり』という結果になるのに、ヒトを対象とした試験では結果がまちまちになるのは、ヒトだけに2種類のハプトグロビン遺伝子があるためではないか」と研究グループはみている。

 だが、真の“悪玉”は、ハプトグロビンではない。

 ハプトグロビンは、寿命が尽きた赤血球を回収し、肝臓に届けて鉄分などを再利用する「赤血球のリサイクル係」として働いている。

 抗酸化ビタミンが効きにくい、2型のハプトグロビン遺伝子を持つ人では、リサイクル効率がやや低く、血中の鉄濃度が高いことがわかっている。

 この血中の鉄が、悪さをしているようなのだ。

 ビタミンCなどの抗酸化ビタミンを飲むと、鉄(酸化第二鉄、Fe3+)が還元されて、体内で酸化第一鉄(Fe2+)ができる。

 この酸化第一鉄は、LDLコレステロールを酸化する力が特に強い。つまり、2型のハプトグロビン遺伝子を持つ人の場合、血中の鉄分が多いため、抗酸化ビタミンを飲むと酸化第一鉄がたくさんできてしまい、かえって動脈硬化が進むという図式だ。

 ただし、「WAVE」試験では約300人分のデータしかなく、今回の結果が確実というにはやや弱い。

 幸い、欧米ではこれまでに「HOPE」や「HPS」など、数万人規模で抗酸化ビタミンの効果を調べた大規模試験が行われている。

 研究グループは、こうした大規模試験のデータを使い、ハプトグロビンの遺伝子タイプ別に結果を見直して、遺伝子タイプが本当に抗酸化ビタミンの効きを左右するのかを確かめるべきだと提言している。

 この論文のタイトルは、「The Effect of Vitamin Therapy on the Progression of Coronary Artery Atherosclerosis Varies by Haptoglobin Type in Postmenopausal Women」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.6.18 抗酸化ビタミンに心血管疾患の予防効果なし、大規模介入試験のメタ分析で判明

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