2004.04.01

男性の亀頭包皮切除(包茎手術)はエイズ感染の危険を85%減らす−−インドでの研究で判明

 陰茎亀頭の包皮切除術(割礼)を施した男性は施していない男性に比べ、社会的習慣や宗教上の問題を考慮してもなお、HIV-1感染のリスクが15%、6分の1から7分の1と大幅に低いことがインドにおける前向き研究の結果判明した。陰茎包皮にはHIV-1ウイルスが標的とする細胞が豊富にあり、感染リスクを高めるためだという。個人や社会にとって受け入れ可能であれば、エイズ蔓延に苦しむ地域の感染予防対策の一つとして今後脚光を浴びる可能性がある。米Johns Hopkins大学医学校感染症学科のSteven Reynolds氏らの研究結果で、Lancet誌2004年3月27日号にResearch Letterとして掲載された。

 Reynolds氏らの研究グループは、1993年から2000年にかけて、インド西部の大都市Mumbaiの南東に位置するPuneに3カ所ある性感染症専門の診療所を受診したHIV-1未感染の男性2298人を対象とした前向きコホート研究を実施した。

 対象者のうち、包皮切除を行っていたのは191人、未切除は2107人だった。フォローアップは4.1カ月間隔で3回(いずれも中央値)実施された。その結果、包皮未切除者では2107人中165人にHIV-1感染が見られたのに対し、包皮切除者では191人中二人が感染しただけだった。

 宗教、年齢、教育程度、婚姻、職業セックスパートナー数などで修正したHIV-1感染の相対リスクは、未切除者を1としたときの包皮切除者のHIV-1感染リスクは15%と有意かつ大幅に低いことが判明した。しかし、HIV-1以外の性感染症については、包皮切除者と未切除者に有意な差は見られなかった。

 包皮切除者のHIV-1感染率が低いことについてはいくつかの先行研究が発表されているが、本研究では検査データによって他の性感染症の感染を調査しており、包皮切除による予防効果はHIV-1感染だけに有効であることを確認している。

 Reynolds氏らは、これらの疫学的データから、包皮切除が、HIV-1の感染を受けやすいCD4陽性T細胞やランゲルハンス細胞が豊富に存在する亀頭包皮を除去ために感染防御に貢献している可能性が示唆されたとしている。

 ただし、本研究の対象者では、包皮切除者の62.1%はイスラム教信者であるのに対して未切除者では0.1%と有意な差があり、宗教的、社会的慣習の違いによる影響が考えられる。しかし、コンドームの使用などに性的行動について、包皮切除者と未切除者に有意差は見られなかったという。

 本研究は、エイズ感染予防の手段として包皮の除去が有力な手段となる可能性を示唆している。しかし、直接には、割礼を施した男性と割礼を行っていない男性について比較した調査研究であり、包皮を有する男性に対する包皮切除(包茎手術)の有効性を結論付けるものではない。このため著者らは、社会的に受け入れ可能であれば、包皮切除によるHIV感染予防についての臨床試験を行うべきだと提唱している。

 本論文の原題は「Male Circumcision and risk of HIV-1 and other sexually transmitted infection in India」。現在、登録(無料)の上で全文を見ることができる。Lancet誌のホームページはこちら。(中沢真也)

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